中日春秋
2010年10月31日
 「キセル」は今でも、辛うじて生き残るが、無賃乗車のことを「薩摩守(さつまのかみ)」という言い方はもう聞かない
▼これは『平家物語』にも登場する平薩摩守忠度(ただのり)の名に「ただ乗り」をかけたシャレだが、外国にも人名の残る言葉は案外多い。ボイコット、リンチ、ギロチン…。薩摩守も含めなぜか不名誉な感じの語も目立つが
▼さて、昨日、生物多様性条約締約国会議(COP10)が未明までもつれ込む激論の末、生物資源取引の利益配分に関するルールを盛り込んだ「名古屋議定書」などを採択して閉幕した。同議定書は、資源供給側の途上国と利用側の先進国が、利害衝突を乗り越えた歴史的合意だという
▼考えてみれば、地球温暖化防止に関する「京都議定書」に次いで、世界の二大環境問題の中核的な取り決めに、いずれも日本の都市の名が残ることになったわけである。単なる巡り合わせだろうか
▼実は、わが国は生物資源の利用側であると同時に、世界でも有数の豊富な生物資源を有する潜在的な供給側の顔も持つ。この問題には欧州連合(EU)と、条約未批准の米国の対立構図もあるが、この点でも日本は仲立ちしやすい位置だ。さらに自然との共生を大事にしてきた伝統がある
▼自然、環境の問題で世界をリードするのは日本の“宿命”、とまで言えば大袈裟(おおげさ)か。何にせよ、残した名を名誉あるものにしたいものだ。