中日春秋
2010年10月26日
 このごろ教師が、とんでもない問題やクイズを子どもに出したといって、新聞沙汰(ざた)になるケースが妙に多い
▼「一日三人ずつ殺すと何日で十八人の子ども全員を殺せるか」とは、愛知県の小学校教師が出した算数の問題。実在の教員名を選択肢に「校長暗殺犯は誰か」と聞く問題を出したのは、同県の高校教師だ。東京都の小学校では、教師が「(三姉妹の)三女を殺す」が正答になるクイズを出し…
▼もちろん彼らは軽率、非常識の誹(そし)りを免れ得ない。だが、ドラマのそういう場面を平気で観(み)るように、たいていの人が非現実の中では「人が人の命を奪う」ということを軽く受け止めがちなのも確かだ。現実味のなさ、自分とはまるで無縁という意識の裏返しだろう
▼だが、そんな普通の人が死刑の決断を迫られることもあるのが裁判員制度だ。無論、殺人とは全然違うが、その究極の刑罰が、問題例でもフィクションでもなく現実に「人の命を奪う」ものであることは間違いない
▼身勝手に思いを寄せた耳かき店員の女性と、その祖母を殺したとして殺人罪などに問われた男の裁判で昨日、検察が死刑を求刑した。裁判員裁判では初めてのことだ
▼制度ができた以上、その時が来るのは分かっていた。だが、評議の時間にとどまらないだろう裁判員六人の苦悩を思えば胸がざわつく。そして、彼らとは「私たち」である。