中日春秋
2010年7月21日
♪分かっちゃいるけどやめられない-とは、故植木等さんの『スーダラ節』の一節。そこで歌われる深酒やなんかとは違って、真実、ダメだと「分かっちゃいる」のにやってしまうことも人にはある
▼例えば、小欄筆者は西洋式毛針を使うフライフィッシングなる釣りをかじるが、頭上に木があれば高く振ってはいけないと明確に分かっちゃいる。なのに、しばしばそれをやり毛針を木に引っかけてしまう
▼眼前の水面(みなも)で魚がはねたりした瞬間、心が波立ち、頭で「分かっちゃいる」ことなど吹っ飛んでしまうのだ。げに理性とは動揺に弱い。まして、それが肉親の危急の報だったりしたら…
▼昨日の本紙『くらしの作文』(名古屋・東海本社版)で、遠方に住むご子息をかたった「おれおれ詐欺」に遭い、多額のお金を詐取された女性の文章を読み胸が詰まった。事情を聞いた息子さんからは、後日、「母の深い愛を感じました」との手紙が届いたという
▼この手の犯罪に警戒が必要なのは誰でも分かっている。だが、詐欺犯は、愛という人の一番柔らかい部分に毒を吹き掛け、動揺を与える手で、まさにその「分かっている」を麻痺(まひ)させにかかるのだということをいま一度心しておきたい
▼あの文章には、「自責の念で、眠れない日が続いている」とあったけれど、母よ、あなたは少しも悪くない。ただやさしいだけです。
2010年7月21日
♪分かっちゃいるけどやめられない-とは、故植木等さんの『スーダラ節』の一節。そこで歌われる深酒やなんかとは違って、真実、ダメだと「分かっちゃいる」のにやってしまうことも人にはある
▼例えば、小欄筆者は西洋式毛針を使うフライフィッシングなる釣りをかじるが、頭上に木があれば高く振ってはいけないと明確に分かっちゃいる。なのに、しばしばそれをやり毛針を木に引っかけてしまう
▼眼前の水面(みなも)で魚がはねたりした瞬間、心が波立ち、頭で「分かっちゃいる」ことなど吹っ飛んでしまうのだ。げに理性とは動揺に弱い。まして、それが肉親の危急の報だったりしたら…
▼昨日の本紙『くらしの作文』(名古屋・東海本社版)で、遠方に住むご子息をかたった「おれおれ詐欺」に遭い、多額のお金を詐取された女性の文章を読み胸が詰まった。事情を聞いた息子さんからは、後日、「母の深い愛を感じました」との手紙が届いたという
▼この手の犯罪に警戒が必要なのは誰でも分かっている。だが、詐欺犯は、愛という人の一番柔らかい部分に毒を吹き掛け、動揺を与える手で、まさにその「分かっている」を麻痺(まひ)させにかかるのだということをいま一度心しておきたい
▼あの文章には、「自責の念で、眠れない日が続いている」とあったけれど、母よ、あなたは少しも悪くない。ただやさしいだけです。