中日春秋
2010年7月14日
 <野球は8対7の試合が一番面白い>とは、よく言われることだ。はっきりしないが、元米大統領F・D・ルーズベルトの言葉だとも伝えられる
▼ある程度、点の取り合いがあった方が面白いのは確かだ。けれど、同じ両軍で十五点入るのでも13対2ではつまらない。つまり、見て「面白い」勝負のポイントはやはり、一点差の「接戦」にあるということだろう
▼昨日、金沢市で将棋の第五十一期王位戦七番勝負の幕が上がった。四連覇を目指す深浦康市王位に挑むのは広瀬章人六段だ。初々しい二十三歳だが「古典的戦法」「過去の遺物」と評す専門家もいる「振り飛車穴熊(あなぐま)」なる戦型が得意中の得意。「振り穴王子」の異名もあるらしい
▼主流の戦法に「逆らいたい気持ちもあって…」とは前夜に聞いた本人の弁。その得意技で、羽生善治名人や渡辺明竜王を粉砕して挑戦権をつかんだだけに、先手だった第一局もやはり「振り穴」で挑んだ
▼これを「オールラウンドに指せることを目指している」と語っていた王位が、数ある引きだしの中から「居飛車穴熊」で受けて立つ展開。第一局は二日目の今日、決着する
▼この棋戦、実は深浦さんの王位奪取以来、昨年まで三期連続で第七局までもつれる大接戦が続いているから期待が膨らむ。あの言葉を借りれば、タイトル戦だって<四勝三敗の勝負が一番面白い>のだから。