中日春秋
2010年3月18日
消防法の規制強化などで旅館を廃業せざるを得なかった人がしみじみ語ったそうだ。「宿をやめる時は口惜しかったですけれど、やめてみてビックリしたのは、他人様をお泊めしていないということの、この何という安心感」(永六輔著『商人(あきんど)』)
▼永さんも書く通り、「この言葉、納得」だ。火災でも起きれば大事になる。自分の責任管理下で他人様を寝泊まりさせる緊張感とは、なまなかのものではないのだろう
▼群馬県の老人施設「たまゆら」の火災で十人が亡くなった惨事から明日で一年。一週間前には札幌市の認知症対応型グループホーム「みらい とんでん」の火災で七人の犠牲者が出た。同種のホーム火災では四年前にも長崎県で七人が死亡している
▼三件に共通するのは当直者が一人だった点。万が一の時もたった一人で対応しなければならない状態で、体の不自由な人も含めた何人もの入居者を寝泊まりさせていることの緊張は、むしろ恐怖に近いのではないか
▼無論、惨事はもう繰り返したくない。だが、法定の当直人数を増やせば悲劇が防げるとは限らないし、単純に規制を強めれば、施設経営は投げ出される恐れもある。簡単な解はない
▼だが、多分こうは言えよう。末端の職員一人に重すぎる荷を負わせることで、危うく成立している。それが、この国の多くの福祉システムの“正体”なのだ、と。
2010年3月18日
消防法の規制強化などで旅館を廃業せざるを得なかった人がしみじみ語ったそうだ。「宿をやめる時は口惜しかったですけれど、やめてみてビックリしたのは、他人様をお泊めしていないということの、この何という安心感」(永六輔著『商人(あきんど)』)
▼永さんも書く通り、「この言葉、納得」だ。火災でも起きれば大事になる。自分の責任管理下で他人様を寝泊まりさせる緊張感とは、なまなかのものではないのだろう
▼群馬県の老人施設「たまゆら」の火災で十人が亡くなった惨事から明日で一年。一週間前には札幌市の認知症対応型グループホーム「みらい とんでん」の火災で七人の犠牲者が出た。同種のホーム火災では四年前にも長崎県で七人が死亡している
▼三件に共通するのは当直者が一人だった点。万が一の時もたった一人で対応しなければならない状態で、体の不自由な人も含めた何人もの入居者を寝泊まりさせていることの緊張は、むしろ恐怖に近いのではないか
▼無論、惨事はもう繰り返したくない。だが、法定の当直人数を増やせば悲劇が防げるとは限らないし、単純に規制を強めれば、施設経営は投げ出される恐れもある。簡単な解はない
▼だが、多分こうは言えよう。末端の職員一人に重すぎる荷を負わせることで、危うく成立している。それが、この国の多くの福祉システムの“正体”なのだ、と。