中日春秋
2010年3月11日
「<世界より私が大事>簡潔にただ率直に本音を言えば」。前にも引いた道浦母都子さんの歌だ。建前が、息苦しいほど強い時、これは初めて反抗の歌として成立する
▼このごろは、いささか怪しい。例えば、ある教師によれば、理解の遅い子に合わせて授業を進めると「うちの子の勉強が遅れる」と堂々クレームをつけてくる親が少なくないという
▼「自分だけでなくみんなのために」の建前はもう、「みんなより自分が大事」の本音を黙らせておくほど強くないのか。信義より利益、共生より競争…。いろんな建前が本音の攻勢に揺れている
▼過去の政権と米国の間に「非核三原則」の一つ、核を「持ち込ませない」の抜け道になる密約があったことなどを現政府の有識者委が認定した。国民は長くうそをつかれていたわけだ。だが、うそで済んでよかったとも言える
▼「現実的に、艦船の寄港や通過時までダメとは言えぬ」とか「どうせ丸ごと米国の核の傘の下なのだから」とか、その辺が過去の政権の本音だったろう。もし、それが三原則という建前を倒していたら、もはやうその必要もない。実際、例外を認める「二・五原則」も模索されたのだから危うかった
▼憲法九条もしかり。たいていの建前はある面、きれいごと、ある面、痩(や)せ我慢だ。強すぎると息苦しくもある。本音は常にそこを突いてくる。油断禁物。
2010年3月11日
「<世界より私が大事>簡潔にただ率直に本音を言えば」。前にも引いた道浦母都子さんの歌だ。建前が、息苦しいほど強い時、これは初めて反抗の歌として成立する
▼このごろは、いささか怪しい。例えば、ある教師によれば、理解の遅い子に合わせて授業を進めると「うちの子の勉強が遅れる」と堂々クレームをつけてくる親が少なくないという
▼「自分だけでなくみんなのために」の建前はもう、「みんなより自分が大事」の本音を黙らせておくほど強くないのか。信義より利益、共生より競争…。いろんな建前が本音の攻勢に揺れている
▼過去の政権と米国の間に「非核三原則」の一つ、核を「持ち込ませない」の抜け道になる密約があったことなどを現政府の有識者委が認定した。国民は長くうそをつかれていたわけだ。だが、うそで済んでよかったとも言える
▼「現実的に、艦船の寄港や通過時までダメとは言えぬ」とか「どうせ丸ごと米国の核の傘の下なのだから」とか、その辺が過去の政権の本音だったろう。もし、それが三原則という建前を倒していたら、もはやうその必要もない。実際、例外を認める「二・五原則」も模索されたのだから危うかった
▼憲法九条もしかり。たいていの建前はある面、きれいごと、ある面、痩(や)せ我慢だ。強すぎると息苦しくもある。本音は常にそこを突いてくる。油断禁物。