中日春秋
2010年2月16日
ただでさえ、コブだらけの道を行くがごとしの人生だ。何事も一足飛びにとはいかない日常の実感を、その言葉に重ねた人が多かったとしてもおかしくはない。「なんで一段一段なんだろう」
▼ご案内の通り、バンクーバー五輪のスキー・モーグル女子で四位だった上村愛子選手の述懐である。長野七位、ソルトレークシティー六位ときてトリノで五位だった後、言っている。「メダルは遠いな。やっぱりまた一こしか上がらなかった」。そして今回だ。「なんで…」と思わず問いたくなった気持ちは分かる
▼無論、着実に一段ずつ上がっている、と言えば言える。7、6、5、4とくれば、次こそはと傍(はた)は簡単に考える。もしそうなれば、日々、日常の「一段一段」に苦闘する人々を勇気づける例話にもなろう
▼だが、彼女の一段とは、練習の辛苦に耐え抜いた四年の時間をたった三十秒で放電した結果、やっと上がった一段だ。三段上がるのに十二年を費やしてきた、その来し方を思えば、気軽に「さあ、もう一段」とは言えない
▼万感込めただろう彼女の「なんで…」に最高の返答があったとすれば、やはり、その結果を「よく頑張った」とたたえた母圭子さんの言葉だろう。「愛子はゆっくり成長できる人」
▼先に3があるかどうかは多分、関係ない。7から4への時間の中にこそ娘の人生の充実をみる母の目である。
2010年2月16日
ただでさえ、コブだらけの道を行くがごとしの人生だ。何事も一足飛びにとはいかない日常の実感を、その言葉に重ねた人が多かったとしてもおかしくはない。「なんで一段一段なんだろう」
▼ご案内の通り、バンクーバー五輪のスキー・モーグル女子で四位だった上村愛子選手の述懐である。長野七位、ソルトレークシティー六位ときてトリノで五位だった後、言っている。「メダルは遠いな。やっぱりまた一こしか上がらなかった」。そして今回だ。「なんで…」と思わず問いたくなった気持ちは分かる
▼無論、着実に一段ずつ上がっている、と言えば言える。7、6、5、4とくれば、次こそはと傍(はた)は簡単に考える。もしそうなれば、日々、日常の「一段一段」に苦闘する人々を勇気づける例話にもなろう
▼だが、彼女の一段とは、練習の辛苦に耐え抜いた四年の時間をたった三十秒で放電した結果、やっと上がった一段だ。三段上がるのに十二年を費やしてきた、その来し方を思えば、気軽に「さあ、もう一段」とは言えない
▼万感込めただろう彼女の「なんで…」に最高の返答があったとすれば、やはり、その結果を「よく頑張った」とたたえた母圭子さんの言葉だろう。「愛子はゆっくり成長できる人」
▼先に3があるかどうかは多分、関係ない。7から4への時間の中にこそ娘の人生の充実をみる母の目である。