中日春秋
2010年1月24日
 足利事件の再審公判は、刑事裁判の歴史にいつまでも残るだろう。「ごめんなさい。勘弁してくださいよお」。菅家利和さん(63)が泣きながら否認を撤回、再び「自白」に戻る取り調べの過程を録音したテープが法廷で再生されたからだ
▼拷問などがなくても、密室の取り調べで精神的に追い詰められた人が虚偽の自白をする。その状況が初めて白日の下にさらされた衝撃は大きい
▼自白偏重の捜査を見直すため、密室での取り調べをすべて録音・録画する全面可視化を求める声が強まるのは当然のことだ。ただ、それを「政争の具」にしてもらっては困る
▼民主党内に出ている可視化法案を早期に提出する動きは、小沢一郎幹事長の政治資金規正法違反事件を捜査している検察への牽制(けんせい)に見える。鳩山由紀夫首相が冷静な対応を求めたのは賢明だ
▼小沢氏はきのう東京都内のホテルで東京地検特捜部の事情聴取を受けた。記者会見も開き、「説明責任を果たせ」という批判の合唱に応える姿勢を見せた
▼捜査の焦点は、政治資金収支報告書への虚偽記入が、ゼネコンマネーの「洗浄」の結果であると立証できるかどうかに尽きる。検察の描く構図が見込み違いなら、足利事件と同様に歴史に汚点を残す。資金提供が裏付けられれば、有権者が初めて実現した政権交代に泥を塗る。結論はまだ出ない。捜査を見守るしかない。