中日春秋
2009年12月17日
 新聞の原稿に数字を入れる場合、すべて、きっちり、厳密な書き方をすれば字数が増えてしまう。数字が変動していて、確定できないケースもある
▼そこで、お世話になるのが「ほぼ」や「だいたい」など、ぼかす表現。だが、数えたわけではないが、多分、一番出番が多いのは「約」だろう。政府・与党も来年度予算編成の基本方針では、それに頼ったようだ
▼これまで新規国債発行額の上限額としてきた四十四兆円に「約」を付け「約四十四兆円以内に抑える」と。財政規律は守りたい。だが、一方で、借金を増やしてでも景気刺激をという連立与党内の要求もある。それを当面、どうにか折り合わせるため「きっちり」「厳密な」表現は避けたわけだ
▼例えば、「きっちり」「厳密な」真ん中は、英語でdead(デッド) center(センター)という。deadの本義はもちろん「死んだ」。棺(ひつぎ)に入れられたように、とは言わないが、そういう語に、少し息苦しい感じがあるのは確かである
▼そこへいくと、「約」や「だいたい」は気が楽。幅があり、変化の余地があり穏やかだ。どうにも決めがたいことは、とりあえずぼかしておくのが鳩山流とすれば、「約」は友愛にも通じるのかも
▼でも、嗚呼(ああ)、いつまでも「約」では済ましてくれないのが人生だ。鳩山さんも早晩、政治課題の多くで「きっちり」「厳密な」態度を迫られよう。