中日春秋
2009年12月1日
スター選手の圧倒的な強さは確かに眩(まぶ)しい。けれど、こういう微妙な記録にも妙に心惹(ひ)かれる
▼この日曜日が千秋楽だった大相撲九州場所で、“新記録”を達成したのは魁皇関である。何と、今年の六場所すべてを同じ八勝七敗の成績で終えた。年六場所制になった一九五八年以降、幕内では初めてという
▼好記録かそうでないのか微妙だ。大関である以上、本人の言う通り「褒められた数字ではない」かもしれない。だが、全場所をきっちり勝ち越したとも言える。そして、この黒星より白星が一つだけ多いという勝ち越し方がまた微妙である
▼思いだしたのは、過日、宇宙物理学者の池内了さんに聞いて、ようやくのみ込めた気になっている話だ。宇宙誕生の時、「物質」と、反対の性質を持つ「反物質」なるものが生まれた。これが同じ量なら、ぶつかりあって光になり全部消えておしまい
▼だが、幸いというべきか。壊れ方が少し違い、たった十億分の一だけだが「物質」が多く残ったらしい。即(すなわ)ち、この銀河もわれわれ生物も、とにかく、今あるすべてのものは、この、いわば「物質」の微妙な“勝ち越し”のお陰で存在しているようなのである
▼人生も全勝とは到底いかず、泣いたり笑ったりだ。それでもきっと笑いが微妙に“勝ち越し”てくれると信じたい。実に、八勝七敗とは、宇宙の摂理なのかもしれない。
2009年12月1日
スター選手の圧倒的な強さは確かに眩(まぶ)しい。けれど、こういう微妙な記録にも妙に心惹(ひ)かれる
▼この日曜日が千秋楽だった大相撲九州場所で、“新記録”を達成したのは魁皇関である。何と、今年の六場所すべてを同じ八勝七敗の成績で終えた。年六場所制になった一九五八年以降、幕内では初めてという
▼好記録かそうでないのか微妙だ。大関である以上、本人の言う通り「褒められた数字ではない」かもしれない。だが、全場所をきっちり勝ち越したとも言える。そして、この黒星より白星が一つだけ多いという勝ち越し方がまた微妙である
▼思いだしたのは、過日、宇宙物理学者の池内了さんに聞いて、ようやくのみ込めた気になっている話だ。宇宙誕生の時、「物質」と、反対の性質を持つ「反物質」なるものが生まれた。これが同じ量なら、ぶつかりあって光になり全部消えておしまい
▼だが、幸いというべきか。壊れ方が少し違い、たった十億分の一だけだが「物質」が多く残ったらしい。即(すなわ)ち、この銀河もわれわれ生物も、とにかく、今あるすべてのものは、この、いわば「物質」の微妙な“勝ち越し”のお陰で存在しているようなのである
▼人生も全勝とは到底いかず、泣いたり笑ったりだ。それでもきっと笑いが微妙に“勝ち越し”てくれると信じたい。実に、八勝七敗とは、宇宙の摂理なのかもしれない。