中日春秋
2009年9月29日
 人は緊張すると、かえって、一番してはいけない間違いをしてしまうことがある。一九九四年の一月八日、伊勢神宮で起きたことも…
▼当時の自民党総裁、河野洋平さんが参拝に訪れた。地元記者の代表としてテレビ局のマイクなども持ち談話を聞く役になったわが後輩。河野さんに向かって開口一番、「明けましておめでとうございます、総理!」
▼一瞬の沈黙。何となれば、前年に細川連立政権が発足、長く自民党総裁=総理大臣が行ってきた恒例の「首相参拝」は、四日前に細川護熙さんが済ませていた。すぐ「総裁」と言い直したが、河野さんにとっては、かなり気に障る間違いだったと察する
▼きのう、その人以来となる「総理ではない自民党総裁」が誕生した。谷垣禎一さんだ。くしくも、というべきか、総裁選を争った候補の一人は河野さんの長男太郎さんであった
▼ところで、古代ギリシャやローマの演劇では、デウス・エクス・マキナ(機械仕掛けの神)なる舞台装置がよく用いられたらしい。筋立て上の混乱を、それの登場で強引に解決したのだという。転じて「時の氏神」といった意も持つ
▼選挙惨敗で混乱の中にあるのは“自民劇場”とて同じ。総裁=総理の日の再来を期し、このまま“幕”にはできまいが、選んだのは実力者だが新鮮さはない谷垣さんだ。さて、デウス・エクス・マキナたり得るか。