中日春秋
2009年9月1日
 古代ギリシャの数学者ピタゴラスは「友情とは何か」と聞かれ、こう答えたといわれる。「220と284のようなものだ」
▼この二つの数字は、その数自身を除く約数の和が、互いに相手の数字になる関係である。220なら1、2、4、5、10、11、20、22、44、55、110で、全部足すと284。284の方も同様に足していけば220になる。ピタゴラスの話から、こういう数字は「友愛数」と呼ばれる
▼次の首相になる民主党代表、鳩山さんの政治信条がまさに「友愛」。総選挙は民主大勝だったとはいえ、自公政権の強引さをさんざん批判してきた立場だ。野党第一党となる自民党とも、ある面、うまくつきあう必要があろう
▼しかし、獲得議席数はとても“友愛数”とは言い難い、308と119。救急車を呼びたいほど痛めつけられた側が、痛めつけた側の友愛を素直に受け入れられるかどうか。連立協議の相手とこそ友情は必要だが、308と社民党の7、国民新党の3も、それぞれ非対称すぎて“友愛数”らしからぬ
▼鳩山さんは今、「数の力を笠(かさ)に着ることはしない」と誓うが、強者が弱者と仲良くするのは案外難しい。最後は力で解決できるとの事実に常に誘惑される。いちいち相手の言い分を聞き、妥協を探るのが面倒になっていく
▼だが、多分、その時だ。勝利の中に、敗北の芽は育ち始める。