#0003 自分の感受性くらい“自分の感受性くらい”ぱさぱさに乾いてゆく心をひとのせいにはするなみずから水やりを怠っておいて気難しくなってきたのを友人のせいにはするなしなやかさを失ったのはどちらなのか苛立つのを近親のせいにはするななにもかも下手だったのはわたくし初心消えかかるのを暮らしのせいにはするなそもそもが ひよわな志しにすぎなかった駄目なことの一切を時代のせいにはするなわずかに光る尊厳の放棄自分の感受性くらい自分で守ればかものよ茨木のり子