Of Love and Shadows


 愛と影の(直訳)


 愛の奴隷(邦題) 




 1994年、アメリカ・アルゼンチン映画。







 De amor y de sombra(原作小説)

 デ・アモール・イ・デ・ソンブラ

 愛と影の(直訳)  

Isabel  Allende

 イザベル・アジェンデ  

 


 監督
 「ベティ・カプラン」 

 原作
 「イザベル・アジェンデ」
 『デ・アモール・イ・デ・ソンブラ』より

 脚本
 「ドナルド・フリード」

 音楽
 「ホセ・ニエト」

 撮影
 「フェリックス・モンティ」




















 出演
 「アントニオ・バンデラス」
 (フランシスコ・リアル)

 「ジェニファー・コネリー」
 (イレーネ)

 「ステファニア・サンドレッリ」
 (ベアトリス、イレーネの母)

 「パトリシオ・コントレアス」
 (マリオ)

 「カミロ・ガラルド」
 (グスタボ)

 「ディエゴ・ウォールラフ」
 (ホセ・リアル)

 「ホルヘ・リヴェラ・ロペス」
 (リアル教授)





 ※現実の時代背景(小説でも映画でも実名では語られていません)

 1973年9月11日
 パラシオ・デ・ラ・モネダ(ラ・モネダ宮殿、大統領官邸)

 ラ・モネダ宮殿でニクソン大統領が命令したCIAが支援する、アウグスト・ピノチェト将軍、率いるチリ共和国軍が、第28代チリ共和国大統領のサルバドール・アジェンデのいるラ・モネダ大統領官邸を攻撃してクーデターを起こした。
 サルバドール・アジェンデ大統領は、国民に最後の挨拶をラジオの生放送でする。
 その後、すぐにサルバドール・アジェンデは自殺をした。
 クーデターを成功させた、アウグスト・ピノチェトが第29代大統領になり、軍事独裁政権がチリ共和国に誕生した。(事実)




 映画本編
 
 1973年頃、あるラテンアメリカの国に軍事独裁政権が誕生した。


 “La Volunted de Dios"
 『ラ・ヴォランタッド・デ・ディオス』
 『神の意志』と名付けられた、高級老人ホーム。
 そのホームの一人娘、イレーネは雑誌記者をしている。今は、行方不明になっている父と母のベアトリスが経営している。
 ベアトリスとイレーネたち家族はここに暮らすが、スペイン人移民でラテンアメリカに移住した上流階級だ。

 イレーネの母、ベアトリスは彼女の甥でイレーネとは従兄弟のグスタボと婚約をすすめられた。彼は陸軍大尉の将校である。イレーネも納得し、婚約に向っている。




 ある日の雑誌社

 イレーネの勤める雑誌社に失業中の元心理学者でカメラマンもしていたフランシスコ・リアルが来て、イレーネの面接している。
 イレーネは、フランシスコをレストランに誘い、そこで話の続きをすることにした。

 独裁政権の今日、イレーネは彼に当局から睨まれていないか確認している。
 フランシスコは、開業医だったが現政権は心理療法をタブーにしているために開業医を辞めざるえなかった。
 イレーネは、フランシスコをカメラマンとして雇うことにした。


 翌日、フランシスコのスクーターで取材先に向かうイレーネ。
 彼女は、婚約者のグスタボが言っていた詩のことを彼に話すと、フランシスコの父親をスペインから追い出したファシストの詩だといわれる。

 村についたイレーネとフランシスコ。
 彼らは神父から、奇跡は昼の12時に起こると言われる。
 12時になると村の女性への憑依が始まった。その時、ラミレス司令官が率いる部隊が到着してその儀式のようなモノを辞めさせようとする。
 彼らは、威嚇射撃をして村人を驚かすが、憑依している女性ラミレス司令官を殴り飛ばしラミレス司令官たち部隊は撤退した。
 しかし、イレーネとフランシスコの取材フィルムは、軍に没収されてしまった。



 『神の意志』老人ホーム。

 フランシスコは、イレーネに仕事の用事で会いにきた。
 彼は、その後イレーネの婚約者グスタボとファッションデザイナーでゲイのマリオと知り合う。
 フランシスコは、マリオの家に行って彼が受けた迫害の数々の話しを聞く。


 独裁政権の監視の中に自由を求めるイレーネとフランシスコ。
 彼らは、現政権の闇を暴こうと必死に取材する。
 そして、また、イレーネとフランシスコは愛欲に溺れることになる。二人は欲望の淵に落ちていく。
 抑圧と自由という相反する中で生きる二人。
 自由と尊厳を求める信仰のようなモノのために生命を捧げる覚悟でイレーネたちは必死に生きていく。・・・ある独裁政権の国で・・・。




 ※この小説を書いたのは、「イザベル・アジェンデ」でサルバドール・アジェンデ元大統領の姪にあたります。
 原作小説や映画の中では、アウグスト・ピノチェト本人の名前をあげず、ある独裁政権として描いていますが、年代とクーデター後の独裁国家の物語なのではっきりしています。
 叔父のサルバドール・アジェンデは、マルクス・社会主義者でしたが、自由民主主義の正当な選挙で選ばれた大統領です。
 イザベル・アジェンデがベネズエラに亡命した時に書かれた1984年出版のこの小説は、主人公イレーネの中にイザベル本人の思想を反映させた優れた小説で、映画は、そのエッセンスを少しとった作品になりましたが、1970年代のチリ共和国と近代史、それに抑圧された社会とは、どういったモノなのか興味がある人は、ぜひ『デ・アモール・イ・デ・ソンブラ』(愛と影の)の原作小説を読んでください。
 とても、素晴らしい作品です。ただ、政治のことだけでなく男と女の欲望を描いた作品です。
 僕の感想ですが、この映画がヨーロッパの巨匠監督とヨーロッパの名撮影監督が撮ったら傑作映画になったと思います。もちろん、ジェニファー・コネリーとアントニオ・バンデラスはそのままで、ステファニア・サンドレッリの出番が増えれば最高です。

 後、僕の記事でこの前に書いた、サルバドール・アジェンデ、第28代チリ共和国大統領の記事を読んで貰えれば、この映画がもっと深いところから観れます。