アンチヒーローショー

アンチヒーローショー

ブログの説明を入力します。

Amebaでブログを始めよう!



「‥‥太子!」
「うん?あ、妹っ‥‥ゴフォオー!なにこの挨拶信じられん!!」
「信じられないのはあんたですよ!このデニム!!」
「デニム!?」

妹子の熱烈な飛び蹴が見事に決まり、太子は約10mを滑るように吹っ飛んだ。
そんな、朝から騒がしい2人の間に割って入ったのは黒い髪に黒いブイネック、更には黒いデニムパンツという全身が黒という男だった。

「はいはい、終了ーお疲れさまでーす」
「なんだ邪魔すんのか真のデニムめ」
「なんだよ真のデニムって!朝から痴話喧嘩は止めろっての!」
「これのどこが痴話喧嘩何ですか!!」
「あっ君が妹ちゃんかー!うん、良いねぇ青春って感じ」

おそらく青春という言葉は若いからという理由で特に意味は無いようだ。結構適当なんだなと思うと同時に、この人の目が若干赤みがかっていることに気がついた。癖なのか、時々狐のような切れ目で人を見る。その時見える赤い瞳に、吸い込まれそうな感覚に陥った。

「‥‥ん?ああ、目ね。これ生まれつきなんだよ、気持ち悪くてごめんね?」
「そんな、気持ち悪いなんて‥‥!ただ、」
「ただ?」

これは一体、どういうことなんだろう。妹子にもわからないことがこの人にわかるはずはない。けれど、なんだか言いたくなって妹子は口を開いた。

「どこかで、見たことがあるような気が‥‥したんです‥‥」





「ねえ太子、さっきの言葉、俺びっくりしちゃった」
「うん」
「もしかしたら妹ちゃん、自覚してないだけで実は記憶残ってるのかもね」

妹子が着替えのため一旦小屋に戻ったことを確認し、黒い男、閻魔は言った。その様子はどことなく楽しそうにも見える。だが逆に、太子は見て分かるほど不快感を露にしていた。記憶が戻ることに不満がある、といった様子だった。昨日さ、と太子が重たい口を開く。

「なんとなく"妹子"って呼んだんだ。そしたらあいつ、なんの迷いもなく私の名前を呼び当てたよ。‥‥一度もお互いの自己紹介していないのに」

へえ、と閻魔が興味深そうに口元を歪ませる。太子はその様子を見たが、特に言うことなく目線をもとの位置に戻す。それから再び言葉を繋いだ。

「記憶が戻ったら、きっと"あの日のこと"で自分を責めるだろうね。あいつはそういう奴なんだ、いつも自分を犠牲にする」
「けれど太子は、それを知ってて」

閻魔の言葉の途中であー、うー、と突然唸りだした太子に驚いて、思わず声を止めてしまった。言わせない、とでもいうような行動だろう。閻魔の言葉を切り、ふっと太子が笑ったかと思えばまた新しい言葉を言った。

「ああ、でも、あの記憶だけは戻ってくれて良かったよ」
「え、なになに?」

閻魔が興味深そうに聞いてくる。それから太子は少々自慢げに、こう言った。

「妹子が作るカレーは美味いんだ」