ぼくは、早朝から御袋を悩ませた。眼鏡を失くしたからだ。日も未だ昇っていない時間帯に勃発。
ついさっき迄在った物が無くなると、ぼくは精神的に落ち付かなくなる。小学生時代からの悪癖。
探し下手はどれだけいても、さっき迄の様な捜索劇は人生初だ。録画番組を観ようとした時だった。
昨夜迄普通に在った眼鏡が無い!!! 自分で探すにも其の時点は已む無く御手上げ…。母に訊く。
階段を駆け下り、台所で稼働中の所、眼鏡紛失の旨を伝える。精神状態も昂って仕方無かった。
昨夜の事を色々問う御袋。捜索の常識にも、頭の中は半ばパニック気味。其の時、6時後半代。
と云うのも、頭を冷やすべく、小1時間寝付いた。其れでも、眼鏡捜査となれば再び昂る精神状態。
自分自身の行動なんて無意識が半分だから。行動の回想ですら、落ち着かず殆ど儘ならなかった。
今現在、事の顛末を急速に忘れかけてはいるが、此れだけは克明に記して置きたい。
家事もそこそこに、ぼくの眼鏡を捜し続ける御袋。足の踏み場を取り戻し、整然とされる自室。
そして、眼鏡との再会。何もかも全てを諦めかけていた。御袋は布団を干すべく運んでいった。
片付けられた簡易ベッド上に、ぼくの眼鏡。母が見つけてくれたとしか思えない。実に感謝。
其れでも怖いと思えたのは、ぼく自身。こんな時でも、ネタを自然に思いつく脳味噌・想像力。
職業病と云うか、ぼくの脳味噌は気楽過ぎて其れが何より怖い。気の持ち様とは決めつけ難い。
眼鏡共々ぼくの一部だから、此れだけは死ぬ迄付き合わねば…。今後のぼく、丁重に扱いまする。