書斎 | 湘南の建築家のひとりごと

書斎

「ヒアリング」で家づくりのご希望を伺う。
その際に出てくる、各部屋ごとのご要望箇所の一つに「書斎」がある。

不思議な事に、何故かリクエストの優先順位としては後ろのほうであり
しかも、たいていが旦那さんが控えめな口調で「あのー書斎も作れますかねー?」と。

自分自身、自宅に書斎は構えていないので(構えられないのが事実だが)
経験則に乏しい話で恐縮だが、書斎の定義が変わったと思う。

我々の親の世代あたりでは、書斎は父親の専用部屋のような印象が強かった。
威厳に満ちた場所で、やすやすとは入れない空間。

しかし、現在の書斎の定義は「共有空間」の傾向が強い。
つまり、夫婦で共有できるし、子供も一緒に使える空間ということだ。

思いつく理由はいくつかある。
まず、仕事のツールがPC主体となり書籍を何冊も広げるスペースが省けてきたこと。
そして奥様方も仕事をされていて、とても忙しい時間をすごしている事。
この二つで言えば、特に後者の要因が大きいように思う。

奥様方は仕事以外に、日々家事をこなしている。
朝食から始まり、掃除、洗濯、子供の行事のスケジュール管理、アイロンがけ、昼食、夕食など
思いつくだけでこれだけあり、まだまだあるはずだからからかなり忙しい。
つまり、家事から逃れることができずに大切な自分の時間も確保するには、家事をこなす空間(部屋)に近接、あるいはつながっている書斎は必然の場所となってくる。
あるいは「家事コーナー」と読み替えてもいいような気がする。


個人的な設計の立場から見てこの変化は賛成だ。

一日のなかで家に滞在している時間は、奥様方の方が圧倒的に長い。
それであれば、家事コーナーを存分に使ってもらうほうが空間が生きてくると思う。
何も、仕事や家事だけでなく趣味の時間としても使えるし
子供達が帰ってくれば、互いに別の事をしていたとしても距離感が近いことから
会話や気配で共有感が高まると思う。
そして、夜は旦那さんのスペースにシフトすればよいと思う。

もう一つの効果として気づいたことがある。
それは、「書斎/家事コーナー」に併設すうことが多い本棚の存在だ。
みんなのスペースになると、そこに並ぶ本の種類もにぎやかになる。
難しそうな本の横に、写真集やマンガがあり、そして料理レシピ本が並びと
実ににぎやかで楽しい。
例えば、旦那さんが何気なく開いたレシピ本から、今晩のメニューが決まり
夫婦で調理がはじまる。
難しそうな本を子供が開き、さっぱり何が書いてあるかはわからないけれども
パパの仕事を想像してみたり。
反対に子供のマンガが実はとっても楽しくてすっかり大人がはまったり。

空間的な共有が、気持ちの共有までもを深くしてくれると思う。

書斎へのリクエストは様々だが、実際の広さ以上に様々な効果を想定して
設計を心がけている。

ヒアリングの際に優先順位が後ろの書斎。
でも、これはもしかしたら旦那さんは全てをわかっていて
奥さんや子供達家族への空間として作ってもらいたいという、ある種の照れであり
そして優しさの表現なのかもしれない。















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