禁煙を行って満一年が経つ。
1年前まで、激しいニコチン依存だった事を考えると今でも信じられないが、
タバコが無くても生きていける事は素直にありがたいと思う心境である。

いや、それぐらい、自分はニコチン依存だった。
息を吸う代わり、深呼吸の代わりにニコチンを吸っていた。

デスクワーク、PCワークが主な業務の自分には、考える時には必ず煙草に火を点け、
ひと段落してはまたタバコに火を点ける。
ライターが手元に無いだけでイライラし始める。

かつて中年に差し掛かり肺が痛くなったのを実感しては、5mg、3mg、1mgと軽い物に変えて行っても、結局止める事は出来なかった。軽い分、本数が増えて日に3箱を買うようになった。
増税後は、タバコだけで1日1300円近い出費となった。

それだけ吸うと、口や喉がニコチンだらけで粘つくので、水やお茶、コーヒーを飲んで流し込む。その出費も少なくないが、胃腸までがニコチン臭くなり、出す物もニコチン臭がする。
ヤニで胃痛がしても、止められない。痛みから胃薬を服用するも胃痛がやむと、また吸い出して胃痛が再発の繰り返し。
そして呼吸器や消化器に留まらず、血中ニコチンの分解で肝臓に重い負荷がかかり、いつも顔色は悪く、関節など皮膚の薄い個所がどす黒くなっていた有様だった。

こんなのでは体が長く続かない、止めなければ、とは思うものの、しかし禁煙を具体的には考えられない。
禁煙を本気でしなければと思いながらも、次の1本に火を点ける、そういう中毒者だった。

だが去年、何の気なしに人づてで聞いた禁煙外来を考えてみた。
自分のこれからを変えてみよう、という軽い気持ちで、ダメだったら仕方が無い、そういう感じだった。

 

すぐ禁煙」で検索しファイザーのHPに辿り着く。

 小田急相模原近辺で検索すると、塚原クリニック、という個人病院があったので、そこに電話してみる。 

夕方だったが、今日来れるなら来てほしい、という看護師さんの言葉に従い、駅近くのマンション1F テナントの小奇麗なクリニックへ行く。
(ここはかつて相模銀座と呼ばれた場所で、一時風紀が悪くキャバレー通りでもあったが、再開発でほぼ浄化された通りである。)

新しいクリニックながら、中はベテラン看護師さんばかりでいろいろと検査してもらい、最後に院長先生へ。
理系っぽい、押しの強くないあっさりとした方のようで、そっけなく問診も終わる。

禁煙の流れを簡単に言うと、薬の服用を開始して一週間はタバコを吸っても良く、その間に薬にに体を慣らしていくとの事。そして体を慣らしていって完全禁煙に移行し、その後薬の量も減らしていく、という物だった。



薬は「チャンピックス」。友人に聞いたら向精神薬とほぼ同じ成分で、鬱に使われる薬によく似ているらしい。

そういえば、クルマの運転は避けて欲しいと看護師さんからは言われて処方箋を手渡された。
だが自分の場合、眠くなる事も、意識が遠くなる事もなく、普通に暮らせた。
ただ錠剤のせいか、胃が荒れて痛くなるのが困った。

さて、服用開始して一週間。薬を飲みつつもタバコをバカスカ吸っていた。
そして禁煙開始の日。朝から体が習慣的にタバコを欲しがったが、以前のような強烈な中毒症状、イラつき感が無くなっていた。
前日、ライターや灰皿もしまっていたので、無理に吸おうと言う気持も失せていた。

変な執着感が起きず、これが向精神薬の効き目なのかと思った。
その後、一週間、2週間と経過しても、どうにかタバコを吸わずに済んだ。
胃が荒れて、クリニックでチャンピックスと同時に胃薬ももらいつつ、いつのまにか胃痛が怖くてチャンピックスの服用を止め、それでもタバコを欲しがらなくなっていた。

タバコを止められない理由の一つに、間が持たない、というのがあったが、これはガムを噛む事で乗り越えられた。で、そのままあまり苦しむ事なく通院期間の3か月が過ぎた。
途中から、チャンピックスを呑まずに過ごし、クリニックの先生にも処方は不要と判断されて、そのまま3か月後禁煙の終了証のような物をいただいた。
何か、激しい禁断症状を乗り越える、地獄のような苦しさを考えていただけに、呆気なく禁煙が出来た事に驚いた。

ただ、こういうような、「あまり苦しまずに禁煙できた」事は、禁煙の有難味が薄れ、再び喫煙者に戻りやすい、とも言える気がしてならない。
ただ、自分の場合は、喫煙時の体へのダメージが半端なかったので、再び吸おうと言う気持ちを抑える事が出来ている。

禁煙して1年。
正直言うと、今でもタバコが吸いたい。今は普通に、吸いたい気持ちを抑えているだけなのかも知れず、それは生涯変わらないのかも知れない。

禁煙して変わったのは、やはり太りやすくなった事だが、顔色は良くなり、自分でも多少は健康な体に戻れた気がする。
呼吸器はもちろんの事、消化器や循環器のダメージも回復してきている。

ただしまだ、肺の違和感が残り、これはもう仕方のない事と諦めている。今年初め、別の総合病院の呼吸器科で診察してもらったら、肺年齢は70歳の老人だと言う。これが長年喫煙してきた自分のツケである。
ただ、あのまま喫煙を続けていたら、肺年齢のさらなる老化は避けられなかっただろう。

もう一点、大事な点だが、部屋がニコチンで汚れる事が無くなった。
かつてPC、特にモニタにびっしりこびりついていたヤニが、この一年は何も付着せずに綺麗なまま。室内の内装やカーテンも同様だ。

ただ、一番困ったのが、仕事の時だ。
ここぞという時、集中力を発揮したい時、長年ルーチンに喫煙が組み込まれていたのが抜けず、どうも仕事に集中出来ない状況が続く。
これは仕方ないのだが、1年経過してもまだ、かつての集中力が取り戻せない。これはこれで諦めるしかないのか、そのうちタバコなしでも集中できるようになるのかは未知数である。

諦めるしかないが、自分は生涯ニコチン中毒者なのだろうと思う。
ただ、今は我慢が出来るだけで、体や精神は今もタバコを欲しがる。
それでも吸わずにいられるのなら、それが一番だろう。