続き
女性:軍部の力はもちろん大きかったですね。
でもここで筆者は
①新聞がお互いに、他の新聞と競争し始めた
②競うようにして、戦争鼓舞の記事を書くようになった
そこにポイントを置いていました。
軍部が力を強めていったのも、むしろそのせいなんだ、っていうことでした。
当然「軍部は悪くない」と言ってるわけではないんですけど。
筆者の森さんは、自分自身もドキュメンタリーの作り手として、つまりメディアに携わる立場から、いわば自分たちを顧みるようにして、メディアの責任ということを考えたんでしょう。
いったん競争原理が働き始めたら、メディアは暴走してしまう、ということでした。
競争原理、そしてこの説の最後には
「資本主義体制をとる日本では、自由競争が原則なんだ」
という言葉が出てきました。
原則ではありますけれど、戦争中の新聞はまさにこの自由競争を加速させた末に、悲惨な結果を導いてしまった、ということです。
「市場原理がメディアをひとつの方向に導く」
とあります。
オオヤ君:市場原理というのは何ですか?
女性:一般的に、市場では安い商品がよく売れますね。
値段が高くて品質が悪い商品は、当然売れません。
つまり競争になりません。
ですから、競争原理さえ働けば 、価格調整 なんかやらなくても、自然と適正価格になっていく。
そのように説明するのが市場原理主義です。
しかし、戦時下の新聞はそうではありませんでしたね。
オオヤ君:他の新聞よりも勇ましい記事を書いて、部数を伸ばす競争をしていましたね。
女性:そうですね。
市場原理主義というのは、まあ要するに儲かるか儲からないか、っていう原理なんです。
新聞は戦争を鼓舞する方向へ突き進んでしまったんですね。
「売れる記事を書こう」
この市場原理が、メディアをひとつの方向へと導いていったんです。
それでは、続きの朗読をお聞きください。
続く