先日、アナウンサーがサカナクション山口一郎氏のご自宅を訪問し、対談する番組がありました。
特に印象的だった部分の文字起こしをしましたよ。
ナレーション:山口さんがコロナ禍で多くの時間を割いてきたのは、SNS生配信です。
参加してる人に呼びかけ、会話を始めるのです。
今どんな生活をして何を感じてるのか、訊ねてゆきます。
年齢や職業も様々な人の生の声を聞いてきたのです。
山口一郎:ずっと闘ってきた矛盾があったんですよ。
たくさんの人に音楽を届けていかなきゃいけないにも関わらず、自分は朝電車にも乗らないし、一日中レコーディングして。。。 朝までレコーディングして昼起きて。
普通の人と違う生活を送っているにも関わらず、みんなの気持ちを代弁するものを作らなきゃいけないっていう矛盾した状況に、ずっと悩んでたんですね。
そんな中ステイホームになって。
僕もリスナーも、みんな家にいたんですよ。
デビューして初めてといっていいぐらい、世の中と自分の生活がリンクしたんですよね。
同じ気持ちを味わってると思ったんですよ。
だから自分が今感じていることをそのまま言葉にすれば、みんな感じてるっていう。
なんか不思議な現象だなぁと思ったんですよ。
じゃあこの感覚の同じ時に、みんなを取材したいと思ったんですよ。
リスナーの人たちが、どんなことを考えてるのか。
コロナにどんな影響を受けてるのか。
その人たちが、自分を好きになってくれた理由とか、どんなものを期待しているのかとか、取材したいなぁって思った時に、インスタグラムライブでちょうど対談機能みたいなのが始まったんです。
聞き手:直接対話することにこだわった理由は何でなんですか?
山口一郎:直接対話する以外に本音聞けないですよね。もう意味がない、リアルじゃないと。
簡単にわかるじゃないですか。
本当の事言ってるのか、かっこつけてるのかなんて。
しかも僕がわかるってことは。。。僕がかっこつけたら、受け取り側もわかるんですよ。
僕が嘘をついて騙される人って、一定数いると思うんです。信じちゃうひとって。
でも見抜いた人たちの方が圧倒的に多いし、そういった人たちには2度と信用してもらえないと思うんですよね。
だからやっぱり、お互いガチンコじゃないと意味がないなぁと思うんですけど。
誰かのフィルターを通ったものを見るより、自分の目で見たり直接聞く方が、そりゃリアリティがあって、自分の中に入ってくると思うんですよ。
多分どんなものでもそうだと思うんですけど、それがSNS、僕の場合Instagramライブでしたけど、すごい一番リアルを感じた。
みんなの生活が見えた。
背景の部屋の感じとかも、わかったりするじゃないですか。
本当にサカナクションのこと好きなんだな、みたいな。
サイン飾ってあったり。
親が寝てるから押入れに入って話してます、みたいな学生とか。
すごいリアルですよね。
そういうのがやっぱり良かったですよね。
ナレーション:山口さんが積み重ねてきた取材。そこで感じ取ったことを新曲に込めたと言います。
♪フレンドリー
山口一郎:たくさんの人と話していく中で、自分のスタンスがわかってきたし、政治的っていうと大げさですけど、社会の中での自分の考え方がどこにあるのか、今までは自分のテーブルの中だけで見ていたのが、沢山の方のテーブルを見たことで、自分のテーブルの上に乗っているものであったり、形状であったり、広さだったり、そういったものがわかったってのは大きかったですね。
「正しい正しくないと決めたくない」(♪フレンドリーの歌詞)という。。。ただ、まぁ決めざるを得ないわけじゃないですか。
生きていく上では。
なんか、その苦しみみたいなものが、ちょうど僕らの世代ではあるんじゃないかなと思って。
聞き手:40歳ぐらいの。
山口一郎:団塊の世代ジュニアは、決断を迫られているというか、意思表示を迫られているというか。
もうちょっと若いとまたふわふわしてられるし、上になるとはっきり決まってるけど、我々は、生きてきた時代もありますけど、決断を先延ばしにできてきた世代だったと思うんですよね。
それが、なんかこのコロナ禍で急に決断を迫られるというか、なんかそんな感覚がありましたね。
僕らが感じているもの、僕らしか感じ取れないものもたくさんあるだろうな、っていう。
それもちゃんと残していかないといけないなっていう責任感も、このコロナ禍で非常に感じましたし、あのフレンドリーって曲にはそういった思いも込めてありますね。