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シグマが新設計の『35mm F1.4DG HSM 』を発売

35mmは難しい、そんなイメージがある。
釣りで言えばヘラブナ釣りだ。
レンジファインダー時代の標準レンズは35mm前後が多かった。
50mmよりは広角、家族で撮る記念写真に最適。『オリンパスPEN』の焦点距離も32mmだった。
一眼レフに最初に付けるレンズは50mmか35mmで議論になることもあった。
35mmに始まり、35mmに終わる。そんな通好みレンズでもあった。
ニコンなら金線入り、キヤノンなら赤線入りの35mmF1.4が用意されるほど定番レンズである。
もちろん『ライカM3』の素通しに見えるファインダーも35mmに合わせて作られている。
しかし、デジカメ世代の人には35mmという画角に対する特別な思い入れ、というか35mmというフレーミングを意識したことはないだろう。
なぜならコンデジのズームは広角28mmスタートが定番。単焦点レンズもスマホを含めて28mmが多い。35mmは通過点に過ぎない。
ところが、レンズ専業メーカーのシグマが新設計の『35mm F1.4DG HSM』を発売。2012年9月に同社はSIGMA GLOBAL VISIONというコンセプトを打ち出した。
これはシグマのレンズをContemporary、Art、Sportsの3種類に分けて各レンズのキャラをハッキリさせるという策である。
最も高性能なのがArtに分類されるレンズで、ハイコスパではなく、ハイパフォーマンスを追求するという方針により、希望小売価格12万3900円という高価格、高性能レンズが発売されたのだ。
SIGMA GLOBAL VISIONのウリは、同社独自開発のMTF測定機A1を使って、出荷前レンズを全数検査することだ。
これでレンズの当たり外れを無くし、カタログスペック通りの性能を発揮する。
MTFというのは、性同一性障害ではなく、Modulation Transfer Functionの略でレンズの性能を示すために空間周波数をグラフにしたものだ。
一般的に空間周波数を10本/mmと30本/mmに固定して、縦軸に像高、横軸にコントラスト値を取り、絞り開放での測定結果を示す。
このグラフの意味を基本的に理解するためには、光は粒子であると同時に波であるという素粒子論から学んで欲しい。
ざっくりとしたグラフの見方だけを言えば、縦軸の一番上の1に10本/mmの曲線が近いほどハイコントラストで抜けがいいレンズ、30本/mmの曲線が上にいけばいくほど高解像度ということになる。
各メーカーは自信作の高性能製レンズに関してはMTF曲線を発表しているので、ライバル同士を比べてみるのも面白い。この際に縦軸と横軸の数値や間隔などが同じかどうかをチェックすることを忘れずに。
例えば左がシグマ、右がニコンのMDFチャート。こうして違うメーカーのレンズを同じ条件で比較できる。
スペックから見るとシグマの35mmF1.4の性能はかなり期待できそうだ!
レンズ専業メーカーにありがちな赤線とか金線が入っていない極めてシンプルなデザイン。
こちらの方が高級感が際立つ。
金属パーツ多用でフォーカスリングが回る感触も軽すぎず、重すぎず、いい感じだ。
ニッコールレンズと並べてもひけを取らない存在感、質感を持っている。
フォーカスリングのゴムのラインの間隔に関しては、シグマの方がカッコイイではないか。
Nikon『V1』 SIGMA 35mm F1.4DG HSM 1/320sec F1.4 ISO100 94mm相当
戯れに『V1』に35mmF1.4を装着。焦点距離は94mm換算になる。背景のボケはさすがに美しい。
私的にはこれぐらい何が写っている分かった方が好きだ。
解像度の高さは1型センサーでも実感できた。
Nikon『D7000』 SIGMA 35mm F1.4DG HSM 1/1000sec F1.4 ISO200 52mm相当
APS-Cサイズの『D7000』で使っても、こんなにボケる。
焦点距離は52mm相当なので、標準レンズとして使える。
柔らかい描写で、樹脂製の眼鏡のフレームの質感がいい。
下にあるおみくじの和紙の質感も見事だ。
Nikon『D600』 SIGMA 35mm F1.4DG HSM 1/4000sec F1.4 ISO100
女子大生モデルさこちゃん登場。
背景までの距離はかなりあるので普通のレンズなら、ここまでボケないのだが35mmF1.4で絞り開放にすると、ここは何処? というほどボケボケになる。
人物が3人いるのだが、それも全く気にならない。
雑踏の中でポートレートを撮ることもできるだろう。
Nikon『D600』 SIGMA 35mm F1.4DG HSM 1/125sec F2.8 ISO200
今度はゆうこりんが原宿の裏街道に現れた。
引きのない狭い路地なのでこれ以上は下がれない。
そんな時に35mmの距離感にちょっと不満がある。
ごく自然なのだ。自然ならいいじゃないかと思うだろうが、これは好みの問題なので仕方ない。
Nikon『D600』 Nikkor 24mm F1.4 1/160sec F2.8 ISO200
私の好きな距離感は、これぐらい。
もっと周囲の状況が入ってくる。つまり広角の方がしっくりくる。
24mmでローアングルが好きだ。
35mmで工夫すれば撮れるかもしれない、今後の課題である。
Nikon『D600』 SIGMA 35mm F1.4DG HSM 1/80sec F1.4 ISO200
絞り開放の威力はアップになれば、さらに強力に効いてくる。
前後がボケるため1点にしかピントが合わない。
これは注意しないと何の写真だか分からなくなる心配があるほどだ。
さこちゃんのネイルアートを撮ったのだが、人差し指にピントが合ってしまい主題があやふやになった例。
このとろけるようなボケ味は他のレンズでは味わえないだろう。
Nikon『D600』 SIGMA 35mm F1.4DG HSM 1/125sec F1.4 ISO200
同じ距離でフレンチトーストを撮影。
後ろは完全にボケるのでテーブルの上をオーガナイズする必要ナシ。
粉砂糖とメイプルシロップがかかったフレンチトーストなぜか非常にうまそうに見えた。
【研究結果】
35mmF1.4は必要かどうか?
その質問にはYesと答えられる。でもF1.4なら24mmでも50mmでもいいのではと言われると、それにもYesと答えそうだ。
しかし、24mmは人物を撮るには広角すぎるし、50mmではF1.4のボケを活かすには望遠過ぎるのだ。
こう考えると35mmの明るいレンズというのは絶妙の焦点距離であり、もちろんズームでは実現できない明るさなので、1本だけF1.4のレンズを選ぶとしたら私は35mmを勧める。
1本だけというのがミソで、どっちつかずの焦点距離とも言える。
昔の50mm F1.2は開放だとフォーカスが甘く、コントラストが低下して結局、少し絞らないと普通の撮影には使えなかった。
SIGMA 35mm F1.4DG HSMに関して言えば、絞り開放から極めてシャープでコントラストが高く、そして歪みも色収差も非常に少ない優等生レンズだった。
賢明な読者諸君ならお分かりのことだろうが、ゆいこりんの履いてきたストッキングはガーターベルト付きではなく、昔っぽいデザインを再現したストッキングであることが、フルサイズ+高性能レンズで撮るとハッキリ分かる。
1型センサーのNikon『V1』で撮ってもここまでの解像度は望めない。
ここ一番の勝負で使いたいレンズだ。
●F1.4の明るさがあれば、35mmという焦点距離は現代でも使いやすい
●F1.4で撮れば、何の変哲のない被写体もアートっぽく見えてくる
●F1.4で撮ることにこだわりすぎない、F2やF2.8でもいいボケ味は得られる
●SIGMAのArtシリーズは極めて高性能でお買い得、これからどんなレンズが出てくるか楽しみだ
(文/ゴン川野)
カメラ生活42年、小学生でオリンパスPEN-Fを愛用、中学生で押し入れ暗室にこもり、高校では写真部部長。
大学卒業後、単身カナダに渡りアウトドアスクール卒業後「BE-PAL」を経て本誌ライターに。
保有交換レンズ41本、カメラ28台(見える範囲で)。
阿佐ヶ谷レンズ研究所もよろしく。
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