ローマ字、ヘボン式 と 訓令式 | 安濃爾鱒のノート

安濃爾鱒のノート

これは web log ではありません。
なんというか、私の「ノート」です。

 日本語のローマ字表記には、主に ヘボン式訓令式 の二種類がある。

 

訓令式

 

ヘボン式

 

 

 で、私が感じる範囲においては、ヘボン式の方が人気があるように思う。特に、若い人。

 ヘボン式の人気の理由は、ヘボン式の方が、英語の表記⇔発音ルールに近いからではないか。

 で、そんな理由で、「ヘボン式の方が優れている」と決めつけている人が居るが、それでよいのだろうか?

 ヘボン式は、確かに英語には近い、しかし、他の欧州語には遠い。

 一方、訓令式は 多くの欧州語に遠からず近からず。

 例えば、日本人の「し」の発音を、英語を母語とする人に聞かせれば "shi" と書くかもしれないが、スペイン語を母語とする人なら "si" と書くであろう。

 

 米国の政治家に「ナンシー・ペロシ」という名前の人がいらっしゃる。第63代合衆国下院議長という要職にある大物で、日本のニュースにも度々お名前が出てくるかたである。この方の正しいお名前は、"Nancy Patricia D'Alesandro Pelosi" で、その中の最後の "Pelosi" の発音について、米国のニュースキャスターや Kayleigh McEnany ホワイトハウス報道官は、「ペロゥスィー」と言っているように聞こえる。しかし、米国には、ラテンアメリカ諸国からの移民が多く、彼らは "Pelosi" を 「ペローシ」 と発音している。

 

Nancy Patricia D'Alesandro Pelosi

 「ヘボン式が正しい」と言い張る人は

 「『し』は "shi" だ。"si" は『スィ』であって『し』ではない。アメリカ人は みんな そう発音している」

とドヤ顔(:したり顔)で言い張るが、それは事実ではない。"Pelosi" を 「ペロシ」 と発音しているアメリカ人は少なからず居る。

 また、フランス人の "ti" は、日本語の「ち」に近い。 (例えば、英語の "anti" に相当するフランス語は、同じ綴り "anti" で、発音は「アンチ」) デンマーク人の "tu" は日本語の「つ」に近い。 (例えば、英語の "nature" に相当するデンマーク語 "natur" は「ナツーワ」、 英語の "culture" に相当するデンマーク語 "kultur" は「クルツーワ」 ) スウェーデン・ノルウェーなども同様に、"tu" は日本語の「つ」に近い。

 

 《「アルファベット表記」イコール「英語」》という偏った考えの人には、ヘボン式が良いように思えるのかもしれないが、現実には、アルファベットで表記するのは英語だけではなく、欧州の沢山の言語がアルファベット表記している現実を考えれば、一概にヘボン式が良いとは言えないのである。

 

Kayleigh McEnany ホワイトハウス報道官(White House press secretary)