ポピュラー音楽講師・ミュージシャンのヨッシー佐藤です。
前回に引き続き今回もアレンジの考え方についてご紹介したいと思います。
今回は特別に、実際の演奏の仕事でやったアレンジを公開させていただきます。
今回は記事がとても長くなってしまいましたので、お暇な時にご覧くださいね。
まずは、こちらをお聞きください。
大阪の新歌舞伎座でのコンサートです。
音声ファイルです。お手数ですがダウンロードしてみてくださいね。
曲はサーモン&ガーファンクルの「明日にかける橋」です。
歌は西田あいちゃんです。
バンドメンバーは僕の友達です。(笑)
今回はこのアレンジをどのようにして行ったのかをご紹介させていただきます。
まずはどのようにスタイル(グルーブ)を決めたのか?というところからご紹介しますね。
みなさんもよくご存じだと思いますが、原曲はこんな感じです。
原曲では特にリズムの要素が強く入っていませんね。
これをリズミカルなロックアレンジにしようとします。
なぜロックにしたかというと、コンサート全体の曲調を考えた時に、ロックの要素が必要になったからです。
「スタイルのあてはめ」で必要になってくるのが、様々なスタイルを想像しながら思い浮かべるということです。
今まで聴いたことのあるロックの曲のリズムを思い出してみるのです。
とにかく色々な楽曲のリズムの中から、明日にかける橋のメロディーに合いそうなリズムを想像してみます。
今回はオルタナティブ・ロックのこの曲をあてはめてみました。
BECKの「LOSER」という曲です。
アコースティック・ギターとサンプリングのドラムサウンドがカッコいいですね。
この曲のスタイル(グルーブ)の要素だけを取り出して、明日にかける橋にあてはめてみます。
この曲を聴きながら、明日にかける橋のメロディーを歌ってみます。
実際に歌ってみるとテンポが少し遅いので、少しテンポを上げてみます。
リズムスタイルはメロディーのリズムとしっくり行くようなので、これで行くことにします。
メロディーのリズムを考える時にヒントになるのが、「刻み」です。
例えばメロディーが8分刻みであれば、8分系のリズムスタイル、メロディーが16分刻みであれば16分系のリズムスタイルをあてはめてみるのです。
明日にかける橋のメロディーはところどころに16分音符が入っているので、LOSERのようなグルーブが合うわけです。
次に必要になってくるのが、(3)ハーモニー(上もの)の確認です。
LOSERの特徴は、ほとんど同じコードが続いていることです。
クラブ系の要素が入っているスタイルは、同じコード進行の繰り返しのパターンが多いです。
そこで、明日にかける橋のAメロの前半のコード進行も、2小節単位の繰り返しに変えてみます。
|| : G-G7/B | C C7 :||
を繰り返してみます。
(今回はボーカルの方の都合でGメジャーのキーにしています。)
このコード進行とメロディーラインと合わせてみます。
バッチリ行けますね。
曲の途中からハーモニー(コード)が展開していくので、リズムはそのままにしてコードだけ、曲の進行に合わせて変えていきます。
コード楽器の音色ですが、LOSERのアコースティック・ギターの雰囲気はそのまま残したいので、アコースティック・ギターと相性のいい「エレピ(ウーリッツァー)」と「オルガン」を組み合わせます。
これでスタイルとグルーブ、「上もの」の確認が終わりました。
ここでもう一度、全体の構成を考えます。
明日にかける橋は全部で3番まで歌詞があります。
変化をつけるために、
1番目はテンポ・ルバート(ゆっくりした自由なテンポ)で歌とピアノだけ
2番からはリズムを入れる
3番は前半を歌とベース、ドラムのみに落としてから、もう一度全員で演奏
という構成にしました。
これで大体のアレンジは完成です。
さて、ざっとですがアレンジの中で、(2)スタイルの決め方と(3)上ものの確認をご紹介させていただきました。
わかりにくいところなどありましたら、お気軽にメッセージをいただけると感謝です。
最後までありがとうございました。
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