#がん治療研究
サルモネラ菌が大腸がんに効く?マウスでは治癒例も/FuturoProssimo
・マウス試験、腫瘍増殖を大幅に抑制・生存率向上・腫瘍完全消失ケース有
・同菌が腫瘍内で一定以上に増殖すると”自爆”→同時に免疫刺激物質を放出し対がん免疫増強
※サイエンス姉妹誌掲載

https://ja.futuroprossimo.it/2025/09/salmonella-kamikaze-contro-il-cancro-al-colon-topi-guariti/

【記事の概要(所要1分)】
シンガポール国立大学などの研究チームは、感染症の原因として恐れられてきたサルモネラ菌を大腸がん治療の「生きた薬」として利用する新戦略を発表しました。

弱毒化サルモネラに遺伝子操作で「同期溶解回路」を組み込み、腫瘍内で一定量に達すると一斉に自壊し、免疫刺激タンパク質「LIGHT」を放出します。

この作用により腫瘍周辺には成熟した三次リンパ組織が形成され、キラーT細胞や自然リンパ球ILC3が活性化して強力ながん免疫応答を引き起こしました。

大腸がんマウスでは腫瘍縮小や生存延長、さらには腫瘍の完全制御が報告され、従来免疫療法が効きにくい大腸がんに新たな可能性を示しました。

ただし現段階ではマウスでの成果にとどまり、人間の免疫や腸内環境では異なる反応が予想されるため、安全性と有効性を確かめる臨床試験が今後の焦点となります。

それでも「腫瘍の内側から免疫の戦場を作り変える」という発想は、チェックポイント阻害薬やがんワクチンとの併用によって次世代治療の扉を開く可能性を持っています。

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日本ではまだ紹介されていないものですが、査読ありの論文誌に掲載されているものということで、取り上げてみました。
掲載されたのは、Science Translational Medicine(サイエンス・トランスレーショナル・メディシン)で、自然科学系最高峰のサイエンス誌の姉妹誌とされています。

ちょっと、本文もロボット翻訳をそのまま掲載されているようなものなので、言葉をならしてまとめてみました↓

今回シンガポール国立大学の研究チームが発表した成果は、これまで感染症の元凶とされてきたサルモネラ菌を、逆に「がん治療のための薬」として利用するものです。

研究者たちは、弱毒化されたサルモネラ株VNP20009を遺伝子操作し、「同期溶解回路」を組み込みました。この仕組みは、菌が腫瘍内で一定以上に増殖すると、一斉に自壊するようプログラムされています。単なる自滅ではなく、その瞬間に免疫を強力に刺激するタンパク質(LIGHT)を放出するのが特徴です。

サルモネラは本来、酸素が少なく栄養が豊富な環境を好みます。腫瘍はまさにその条件を満たしているため、菌は自然に腫瘍組織へ集まります。腫瘍に入り込んだサルモネラはそこで増殖し、一定の密度に達すると一斉に崩壊し、LIGHTが放出されます。LIGHTは免疫細胞上のHVEM受容体に結合し、局所の免疫を一気に覚醒させます。

その結果、腫瘍の近くに成熟した三次リンパ組織mTLSが形成されました。これはいわば臨時の免疫中枢であり、B細胞とT細胞が秩序立って集まり、強力ながん免疫応答を起こします。さらに、通常大腸がんの進行とともに減少してしまうILC3が回復し、腫瘍を攻撃するキラーT細胞CD8+が活性。インターフェロンγやグランザイムBといった抗腫瘍分子を分泌しました。

研究は、自然発症型と化学誘発型の2種類の大腸がんマウスモデルで行われました。その結果、腫瘍の成長は大幅に抑えられ、生存期間が延長されました。さらに、一部のマウスでは腫瘍が完全に制御される、治癒に近い状態が得られました。

ただし、この成果はあくまでマウスでの前臨床です。人間の免疫システムや腸内細菌叢はマウスとは大きく異なるため、そのまま応用できるとは限りません。また、遺伝子改変した生菌を体内で使うことには、感染や炎症、予期せぬ副作用のリスクが伴います。そのため、臨床応用に向けては安全性を徹底的に検証する必要があります。

それでも、これまでだ大腸がんでは免疫チェックポイント阻害薬の効果が限定的であったことを考えると、このような「腫瘍そのものを免疫の戦場に作り変える戦略」は大きな可能性を秘めています。将来的にはチェックポイント阻害薬やがんワクチンとの併用によって、より強力な治療手段となるかもしれません。


まとめると、これは「腫瘍に潜り込んだ上で自ら爆発して免疫を呼び覚ますサルモネラ」という発想の治療です。臨床応用はまだ先の話ですが、がん治療の新しい未来を切り開く可能性を感じさせますね。