#乳がん
乳がん血管擬態を制御する新規分子発見、診断・治療応用へ期待-慶大ほか/医療NEWS
・血管擬態がある場合は完治不可例が多い
・マウス実験、腫瘍増大は血管新生ではなく血管擬態の増加によると判明
https://www.qlifepro.com/news/20250919/ang-1-iso6-2.html


【記事の概要(所要1分)】
慶應義塾大学らの研究グループは、乳がんの進行や転移に関わる「血管擬態」を制御する新たな分子として、接着関連タンパク質Ang-1の新規アイソフォーム「Ang-1 iso6-2」を発見しました。

血管擬態は、がん細胞が血管のような通路を自ら形成し、治療を難しくする現象ですが、これまで診断の指標となる分子が不明でした。

研究では、乳がん細胞でAng-1を欠損させると血管擬態が促進し腫瘍が拡大することを細胞実験とマウス移植で確認。

さらにAng-1 iso6-2を再発現させると血管擬態が抑制され、ヒト乳がん組織でもがん部では発現が低下していることが分かりました。

これにより、Ang-1 iso6-2は乳がんの診断マーカーや治療標的となる可能性が示され、早期診断や予後予測、新しい治療法開発、さらには他のがん種への応用も期待されています。

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このリリースは、一つ重要な発見を含んでいますね。

それは、がん細胞が増えていく原因が、血管新生よりも血管擬態だとわかってきた点です。

血管新生が原因ではなかったということではなく、血管擬態が大きな役割を担っていた、と言う方が妥当かと思います。

これまで、がんが大きくなるのは血管新生が主な原因と考えられており、実際、多くの抗がん剤はこれをターゲットにしたものです。

ところがこの研究では、乳がん細胞でAng-1を欠損させたマウス腫瘍は有意に大きくなった、のです。

このことは、がん研究の常識を一部塗り替えるほどのインパクトではないのかな、と思います。

また、既存の血管新生阻害薬では効かない理由を、一部説明できる可能性もあります。

この視点が確立すれば、がんは増大にあたって血管を増やす他に、血管のようなものを作る、という考えで新しい治療戦略が見いだされることになるでしょう。

言わば、がんを兵糧攻めにするために血管を止めるだけではなく、この血管擬態をも止める必要が見いだされるわけです。

こちらの研究の現在地は、その血管擬態に関わる”サイン”が見つかったということですから、がんの悪性度の把握や、先回り戦略に役立てられるものと言えそうです。