#がん治療研究
【個別化がんワクチン】モデルナ+メルクは28年までの申請視野、NECも開発進展/AnswersNews
・モ+メ:悪性黒色腫・肺がん、ビオンテック:進行がん治療への応用検討
・NEC:臨床試験中→頭頸部がん全16人2年以上再発なし(P1)、免疫CP阻害薬併用で更なる期待
https://answers.ten-navi.com/pharmanews/30917/
【記事の概要(所要1分)】
がん治療の新しい希望として「個別化がんワクチン」の開発が世界的に進んでいます。これは、患者ごとに異なるがん細胞の遺伝子変異から生じる「ネオアンチゲン」をAIや計算科学で解析し、その情報をmRNA・DNA・ペプチドなどの形でワクチン化し、免疫細胞に学習させてがんを狙い撃ちする治療です。つまり、一人ひとりの「オーダーメイドがんワクチン」です。
米モデルナはメルクと組み、悪性黒色腫や非小細胞肺がんを対象にP3試験を実施中で、早ければ2028年の承認申請を視野に入れています。ビオンテックも開発を進め、進行がん治療への応用が検討されています。いずれも抗PD-1抗体「キイトルーダ」との併用療法で、再発予防を目的とするアジュバント療法としての実用化が期待されています。
国内ではNECがAI技術を武器に、独自のアルゴリズムで高精度のネオアンチゲン予測を行い、2種類のワクチン候補を臨床試験中です。ウイルスベクターの「TG4050」では、頭頸部がん患者16人全員が2年以上再発なく経過するというP1試験結果が報告されました。経口投与型の「NECVAX-NEO1」も安全性と免疫応答を確認し、今後は免疫チェックポイント阻害薬との併用でさらなる効果が期待されています。
市場規模は2030年に世界で445億ドル、日本でも2033年に37億ドルに達すると予測されており、がん治療の柱となる可能性があります。AIと免疫学が融合したこの分野は「究極の個別化治療」と呼ばれ、標準治療が終わった患者だけでなく、手術後の再発予防や進行がんの補助治療としても活用が広がる見通しです。
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がんワクチンについては、今後大きな進展が確実視されている療法と言えますが、その中でも開発をリードしているのか、モデルナ+メルク、ビオンテック+ジェネンテックです。
モデルナは、その名前を聞いたことがある方も多いと思いますが、コロナワクチンで名を馳せたあの会社です。
現在、悪性黒色腫を対象とした臨床試験は既にフェーズ3まで進んでいます。
また、非小細胞肺癌対象試験も同様にフェーズ3。
この進展状況が、2028年までの申請を豪語する根拠と言えます。
モデルナの強みは、mRNAワクチンの設計についても製造についても既に備わっているところです。
商業科→一般化はもうすぐ、と言える状況です。
薬の位置づけとしては、手術後の再発予防(アジュバント)として最も実用化が近いものと考えられます。
そしてビオンテック+ジェネンテックは2番手として有力です。
こちらは大腸がん、膵管がんでフェーズ2進行中。
悪性黒色腫の1次治療としての試験では、フェーズ1で効果が確認できずに中止になったという経緯があります。
こちらも、1次治療としてではなく、アジュバントに重点が置かれています。
モデルナ勢ががん種を絞ってその効果を出しているのに対し、ビオンテックはまだその辺は模索中といった状況です。
そのがんに効くか、その治療ラインで最も有効か、要するに、最も効果が出る使い方がまだわかっていないようです。
モデルナもビオンテックも、手術後の再発予防→アジュバントがその主戦場になっているという点では共通しています。
ご自分に該当する、という方も多くいらっしゃると思いますから、本当に、本当に期待が大きいものです。
これまで、がんワクチンは効果が疑われていたものですが、個人の遺伝子変異に合わせることが出来るようになっている点で、その精度が格段に上がっていると言えます。
再発予防ということで効果を示すことが出来れば、これは直接、長期生存への道が大きく開けてくることになります。
免疫チェックポイント阻害薬と個別化がんワクチンの組み合わせが、次世代の主たるアジュバントになっていく可能性が益々高まっているように思えてなりません。
ところで、NECがこの分野に参戦しているのは、ちょっと面白いところです。
おそらく、日本ではがんワクチン最右翼ですが、ウィルスベクターや自社開発のバクテリアベクターを使用したもので、ウィルスベクターについては頭頚部がんで効果が確認されています(フェーズ1)。
バクテリアベクターは、経口型、つまり飲み薬にすることが出来るようで、これが実用化されれば患者さんへの負担が激減しますね。
NECのこのがんワクチンは、個人の遺伝子変異をAIで解析し、たった一つのワクチンを作り上げるというやはり個別化医療です。
免疫チェックポイント阻害薬が効かない人への追加治療として期待されているようです。
個人的には、経口型のバクテリアベクター版は大注目だと思っています。
これが一定の効果が成せるとすれば、飲み薬でがんを治せる時代が到来しますからね。