#がん治療研究
トリプルネガティブ乳がん、がん細胞とマクロファージの特定分子を介した転移機構を解明 筑波大ほか/医療NEWS
・がん細胞が出す「GPNMB」が、免疫細胞マクロファージに作用しがんを守り進行させる
・マウス実験→同阻害で肺転移著しく減少、がんへの免疫活性
https://www.qlifepro.com/news/20250912/tnbc-2.html


【記事の概要(所要1分)】
筑波大学などの研究グループは、転移や治療抵抗性が強く治療選択肢が限られるトリプルネガティブ乳がん(TNBC)の新たな仕組みを解明しました。

研究では、がん細胞が高発現する糖タンパク質GPNMBがシアル酸修飾を受けて免疫受容体Siglec-9と結合し、マクロファージを免疫抑制的な性質へと変化させるとともに、がん細胞自身の転移能力を高めることが示されました。

さらに、がん細胞とマクロファージの間で自己増幅ループが形成され、腫瘍微小環境全体ががんの進行を助ける方向へと作り変えられていくことが確認されました。

一方で、マウスモデルでSiglec-9の相同分子とPD-1を同時に阻害する併用免疫療法を行ったところ、肺転移が著しく減少し、免疫抑制性細胞の働きも抑えられることが分かこの成果は、GPNMB-Siglec-9軸がTNBCにおける進行と治療抵抗性の中核であることを明らかにし、将来的に新しい治療標的となる可能性を強く示しています。

現在の治療に限界があるTNBC患者にとって、転移抑制や免疫環境の改善につながる新たな希望の道筋が示されたといえるでしょう。

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がんは自分の周りの環境を上手に利用して、成長や転移を進めるのですが、その中でも大事なポイントが「腫瘍随伴マクロファージ(TAM)」と呼ばれる免疫細胞です。本来なら体を守るはずのマクロファージが、がんの働きかけによって逆にがんを助ける役割に変えられてしまうというのです。

今回のこの研究は、がん細胞が大量に作り出す「GPNMB」という糖タンパク質がそのカギになっていることがわかったというものです。

GPNMBは「Siglec-9」という免疫のブレーキ役のような受容体と結びつきます。するとマクロファージががんを守る性質に変化し、さらにがん細胞自身も転移しやすい姿に変わっていきます。

この仕組みはがんとマクロファージの間で「悪循環のループ」を作り出し、がんがより強く広がっていく原因になっていたのだと。すごい発見です。悪の根源がわかったようなものです。

そして、この情報をもとにマウス実験を行ったところ、免疫をブレーキしてしまうSiglec-9と免疫療法でお馴染みのPD-1という分子を同時にブロックすると、がんの転移が大幅に減ることが確認できたとのこと。

マウス実験ですから、まだまだ可能性の領域を出ないものですが、難しいトリプルネガティブに新しい治療法になるかも、ということです。