#がん治療 #自由診療
「不治のがんに光明」それでも日本で広まらないのはなぜ? 『はたらく細胞』監修医が語る現実/AllAbout
・プレシジョンメディシン
・遺伝子変異に基いて最適の分子標的薬を選ぶ治療法
・高費用、医療制度の壁
・米国で普及、他国でも導入機運高

https://allabout.co.jp/gm/gc/513776/

【記事の概要(所要1分)】
がん治療の新しい可能性として注目されているのが「プレシジョンメディシン(精密医療)」です。これは、患者ごとのがん細胞が持つ遺伝子変異を徹底的に解析し、その結果に基づいて最も適した分子標的薬を選び出す治療法です。従来の抗がん剤は「効くか効かないか分からない」という不確実さを伴いましたが、この方法では、標準治療を終えたステージ4患者の半数以上に効果が見られています。まさに「もう打つ手がない」とされた患者にとって、新たな光となる可能性があります。

一方で、日本ではまだ十分に普及していません。理由の一つは費用の高さで、遺伝子検査に40〜50万円、治療薬は月額60〜100万円と高額な自費診療になってしまう点です。さらに、医療制度の壁もあります。臓器別に診療科が分かれているため、本来は有効な薬があっても「胃がんに肺がんの薬を使う」といった柔軟な対応が難しいのです。大学病院など大規模な施設ではガイドラインに縛られ、挑戦的な治療が進めにくい現実もあります。

その中で、江戸川病院副院長の明星智洋医師は、自ら全国のクリニックをマネジメントし、プレシジョンメディシンを実践する数少ない医師の一人です。研究会を立ち上げ、産学連携を通じて保険診療化を目指し、日本のがん医療の新しい道を切り拓こうとしています。

米国ではすでに広く行われ、台湾やインドネシアなどアジア各国でも導入の機運が高まっています。プレシジョンメディシンは、臓器別の治療という従来の常識を超え、「その患者の遺伝子に合った薬を選ぶ」時代を切り開こうとしています。

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日本でも遺伝子パネルが登場していますから、進行がんで標準治療が出来なくなった場合などは保険適用となっているものです。

ただポイントとしては、その結果見つかった薬が「保険で使える薬」でなかれば、治療につながらないケースが結構多くなっているようです。
ということは、治療へと踏み込んだ時に、依然として自由診療の領域にはみでてしまうものと言えます。

日本には誇るべき標準治療がありますから、これを基本の治療・医療として考えるのは当然の流れと言えます。

ただ、この標準治療を当然のものとせずに、一旦、概念的に捉える時、プレシジョンメディシンのアプローチが少し違うところにあるのが見えてきます。

標準治療というのは、臓器別やステージ別に「平均的」に効く治療法のこと、と言えます。
つまり、治験で効果が測定されてその平均が測られるのですが、これで「有意」→一定の人一定の効き目があるわかった時に、標準治療として承認され得るわけです。
言うなれば、集団平均に基いた治療法です。

一方、プレシジョンメディシンというのは、平均がどうかとか、集団がどうかとかの概念は基本的に存在していません。
対象となる患者に合わせた治療、よく言われるところのオーダーメイド医療が相当してきます。

これ、個人的には、あまりにも標準治療の標準化プロセスが標準概念化しているため、「プレシジョンメディシンはどれくらいの人に効くのかわかっていないんでしょ、だったらその治療は一か八かになるんじゃないですか」という考えに落ちていきます。
しかし、治療法をあみだす概念がそもそも違うことを理解しておかなくてはと思います。
標準治療は全体主義的治療、プレシジョンメディシンは個人主義的治療、政治じみてきますが、このようにすみ分けて良いかも知れません。

一つ、プレシジョンメディシンを考える上でフィルターがかかってしまうのは、それが自由診療に該当してくるということです。

日本ではとかく、保険外治療はタブー視されます。
それは、故民会保険制度の特性とも言えますが、平等に同じ医療を受けることが出来る、医療は平等に施されるという根底意識がとても強く、保険外治療は金持ちの特権というような看板が最初についてしまうところがあると思います。

それから、そもそも保険、保険外の混合医療が制限されているという、制度的問題があります。
保険外治療を導入した時点で、基本的には保険治療を受けることが出来なくなってしまうというものです。
もちろん、これには理由がありますから、悪手扱いしてはいけないものです。
しかし結果的には、治療を「保険でいく」か「全部自費でいくか」その2択がいつも存在していることを意味しています。

あとは、標準治療への信奉とでも言いますか、お医者がそもそも標準治療以上に科学的根拠が最も確かなものは存在していない、としている傾向が強く、それを医師ではない人も受け入れている状況があります。

実際、それ(→標準治療が最も患者に効くという科学的根拠を有しているということ)は正しいと私は思っています。
ただし、そこには前提条件に伴う”限界”が存在していることを認識しておかなくては、とも思うのです。

標準治療とは要するに、RCTなど多数の臨床試験で有効性と安全性が検証されて、最終的には学会のガイドラインにまとめられた治療方法です。
確かに「現時点で多くの患者に最も効果があると証明されている方法」 と題することは出来ますし、科学的に最も確からしい平均的解答と言えます。

しかしその平均的効果に基いているということに限界は当然に存在しています。
つまり、これが先述の概念の話に関係するのですが、要するに標準治療とは、多数派に効く治療のことなのであり、それが必ず個人に効く治療ではない、ということです。
多数派ではなくなってしまう要素は、人間誰しも抱えているものです。
人それぞれ、遺伝子が違います。生活習慣が違います。体質が違いますから。
当然のように、限界はあるのです。

まもう一つの限界は、新しい治療法をすぐには試せないということです。
これはもう悩みの最たるものの一つですが、試験には相当な時間がかかりますからね。

それ限界をも踏まえた上で、標準治療が最適解とするのが現代日本の大勢というわけです。
しかし私は個人的に、最適解ではあってもただ唯一の答えなのか、というチャレンジもまた受けるわけです。
その”限界”を補う一手法として、プレシジョンメディシンが位置付けられないのか、というもう一つの答えに導かれるのです。
選択肢としてあってよいものだな、という感じです。

言いたいことは、標準治療と自由診療であるプレシジョンメディシンは、患者さんの治療を主体で考えた時、対立する構造にはないということです。
SNSやブログ或いは書籍などで、がん治療において、標準治療以外は敵だ、程の論説が繰り広げられていますが、それは本当にそうか、と。
標準治療で効果が見込めない場合には、プレシジョンメディシンという流れの一つとして捉えても良いのではないか、と。
もちろん、私がもしがんと診断されたら、標準治療を優先させての上、ということでもあります。

私は不幸にも、そんなにお金持ちじゃないですから、がん保険をフルに使ってやれるかどうか、というところです。
その辺は、もう一度保険内容を確認する必要があるでしょう。

遺伝子パネルは保険診療とされているわけです。
未来の標準治療候補として、プレシジョンメディシン他、幾分の自由診療を捉えて、保険か自費か、というような制度環境は改善してもらいたいと思いますね。