#肺がん
難治性癌の代表・小細胞肺癌の治療に新たな光 非神経内分泌タイプの小細胞肺癌にIGF1R阻害剤が有効な可能性/慶應義塾大学
●マウスモデルで顕著な腫瘍増殖抑制確認
●『Nature Cancer』掲載

https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/files/2025/5/1/250501-1.pdf

 

マウス段階の試験です。以下、概要です。

 

<概要・背景>
小細胞肺がんは、肺がん全体の約15%を占め、特に進行が早く転移しやすいため、治療が難しいとされています。​手術が適用できないケースが多く、5年生存率は10%未満と非常に低いのが現状です。​従来の治療法では、シスプラチンやエトポシドなどの抗がん剤が使用されてきましたが、効果は限定的でした。​近年では免疫チェックポイント阻害薬も導入されていますが、長期的な効果は十分ではありません。​

<研究の成果>
1. オルガノイドライブラリーの構築
研究チームは、33人の小細胞肺がん患者から40種類のオルガノイド(患者由来のがん細胞を三次元的に培養したモデル)を樹立しました。​これにより、実際の患者のがんの多様性を反映した研究が可能となりました。​

2. 小細胞肺がんのサブタイプ分類
小細胞肺がんは、遺伝子発現のパターンにより、ASCL1、NEUROD1、POU2F3、YAP1の4つのサブタイプに分類されます。​研究チームは、構築したオルガノイドを用いて、これらのサブタイプの存在を確認しました。​

3. IGF-1依存性の発見
特に、POU2F3およびYAP1タイプの非神経内分泌型小細胞肺がんが、IGF-1(インスリン様増殖因子)に強く依存して増殖することを明らかにしました。​これは、これらのがん細胞がIGF-1なしでは増殖できないことを示しています。​

4. IGF1R阻害剤の効果
さらに、IGF-1の受容体であるIGF1Rに対する阻害剤を用いた実験により、非神経内分泌型小細胞肺がんのオルガノイドおよびマウスモデルでの腫瘍増殖が著しく抑制されることが確認されました。​

<今後の展望>
この研究は、小細胞肺がんの一部サブタイプに対する新たな治療法の可能性を示しています。​特に、非神経内分泌型の小細胞肺がんに対して、IGF1R阻害剤を用いた個別化医療の開発が期待されます。​また、構築されたオルガノイドライブラリーは、今後の研究や新薬開発において貴重なリソースとなるでしょう。