#糖尿病
インスリン抵抗性に関わる腸内細菌・糞便代謝物を特定  理研など/医療NEWS
●ある腸内細菌叢パターンでは腸管内で単糖類が吸収されず炎症誘導に深く関連=糖尿病と関連
●”Alistipes indistinctus”種を肥満モデルマウスに投与→インスリン抵抗性改善→創薬に可能性

https://www.qlifepro.com/news/20230901/alistipes-indistinctus.html

 

がん治療とは直接的に関係の無い糖尿病に関する話題です。

 

がんステージ4=完治を目指さない病期において、ケトン食を食事療法として用いた民間療法により、標準治療である抗がん剤の使用と同等以上の予後が期待出来るのはないか、という仮説のもので実施されている「がん共存療法」と名付けられた療法の臨床試験があります。

 

このケトン食主体の療法は、緩和ケア医でありご自身が大腸がんステージ4の患者さんでもある方が実践されて「いけるぞ」と感じられて臨床試験にまでこぎつけられたもので、成果が出ているケースもある、と目されるものです。そう言えると思います。

 

ケトン食というのは、言い換えると、血糖値を上げない食事を摂ること、と言えます。

 

従って、この臨床試験に参加されるための条件として、糖尿病を患っていないこと、が掲げられています。

血糖値が敏感に上がってしまう方は、試験上、参考にならない可能性があるので初めから排除しているわけです。

 

がん治療を考える時、治療そのものはもちろん超重要ですし、ケトン食のお話からすると、毎日の食事も大事なのではないかと思います。

食事については、糖尿病をお持ちの場合は、これをなんとかすることが根源的なポイントではないのか、とも思えます。生命予後に大きく関連する可能性があるということになりますから。

 

さて、本題であるこの試験ですが、

でんぷんなどの複雑な糖類はヒトが腸管で吸収されるような単糖類に変換されるのが普通なのですが、ある腸内細菌叢(腸内細菌の集まり)パターンでは、腸管に残ってしまう現象が起きていることがわかった、と。

【抜粋】 インスリン抵抗性に関連する腸管内の単糖類の増減には、特定の腸内細菌種と糖質分解・利用に関わる腸内細菌の遺伝子機能が関与している可能性

 

その腸管に残った単糖類が、慢性炎症などを起こさせるきっかけとなる免疫細胞の炎症関連遺伝子と炎症性サイトカイン(≒細胞に炎症を起こさせるタンパク質)とを結びつける役割を果たしてしまうことがわかった、と。

【抜粋】 単糖類はそれ自体が過剰な栄養素になる一方、ヒト体内の免疫細胞から炎症性サイトカインの産生を促すことで、インスリン抵抗性や肥満を増悪させる可能性

 

糞便中の単糖類は、腸内細菌と免疫細胞の炎症関連遺伝子、炎症性サイトカインを結ぶネットワークハブであることが可視化された 

 

つまり、腸管内に残った単糖類は糖尿病の原因の一つである、と言えそうです。

 

そこで、腸管内に単糖類が残らない腸内細菌叢パターンを持つ人に優位であった 「Alistipes indistinctus」 を、肥満モデルのマウスに投与してみたところ、腸管および血液中の単糖類が減少した、と。

これはつまり、あるヨーグルトとかに入っていそうな細菌類が、インスリン抵抗性を改善する可能性が出て来たということになります。

 

結論。

【抜粋】 「本研究は、これまで明らかにされていなかった腸内細菌とインスリン抵抗性をつなぐ機序を解明したとともに、腸内細菌および腸管内単糖類が治療標的になり得ることを示した。今後、本成果をもとに、新しいプロバイオティクスやインスリン抵抗性の治療薬が創出されるものと期待される」

 

Alistipes indistinctusは、腸内細菌企業とでも言うべきヤクルト社によって見つけられたもので、既に注目度の高い細菌であるようです。

 

腸管内の単糖類をどうするか、という治療のコンセプト。

その対処法の一つとしての腸内細菌。

どうやら、免疫系にも影響していそうなことですので、今後大いに注目です。

 

ちなみにこの研究論文は、掲載へのハードルが高いと言われる英「nature」掲載で、信用度の高いものです。