#がん治療
「根治は目指さなくていい」って、どういうことですか?
がん研有明病院 高野利美医師【再】/ヨミドクター
●「がんあっても良い状態で長生きする」≒「がんが治った」という考え
●「生存期間」と「生活の質(QOL)」に主眼を置いた治療
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20230221-OYTET50018/
お盆や休みということもあり、なかなか目新しい情報が出てこないので、上半期に反響が大きかった記事を取り上げています。
こちらの記事は、個人的には、印象深かった記事上半期ナンバー1です。
【抜粋】 遠隔転移のある「進行がん」は根治が難しいのですが、進行がんの患者さんに対して、私は、「根治は目指さなくていい」と説明します。
・遠隔転移のある進行がんでは、「根治」は難しい。
・遠隔転移を切除した場合や、薬物療法が効いてがんが確認できなくなった場合など、治ったように見えることがあるが、がんがゼロになっているわけではない。
・そもそも、がんがゼロになったかどうかを判定することはできない。
「治らない」という事実を受け止めるのは容易なことではないでしょうが、「治る」ことへのこだわりから解放されたと考えてみるとよいかもしれません。
治ることよりも、大事なこと
がんをゼロにすることが目指せたとして、それが究極の目標と言えるでしょうか。体中の病気を切除して、強力な抗がん剤を使って、がんはゼロになったけど命を落としてしまった場合、それでも、がんがゼロになってよかったと思うでしょうか。
根治にこだわるよりも、「いい状態で長生きすること」を目指す方が重要なのだと思います。根治は達成できないとしても、がんとうまく長くつきあっていくことができます。
がんが悪さをしないようにうまく抑えながら、できるだけ長生きして、天寿を全うできれば、それは、「がんが治った」というのと、ほとんど同じことのような気もします。
「根治」が究極の目標ではないということに気づければ、追い詰められて治療を受けるのではなく、目標に適した治療をうまく選べるようになるはずです。
医師の中にも、「根治」にこだわりを持ち、遠隔転移に対する局所治療を勧めたり、強い抗がん剤を勧めたりする人がいます。遠隔転移を手術して長生きしている人がいる、という経験を語る医師もいます。でも、そういう手術をせずに長生きしている人もたくさんいますので、手術のおかげで長生きしたかどうかはわかりません。
私の患者さんの中には、進行がんを抱えながら、自分らしく生きている方がたくさんおられます。CTを撮れば、病変が確認できるものの、何年にもわたって悪さをすることなく落ち着いているような方もいます。その病変に対して局所治療を行うことも可能ですが、あまりその必要性は感じません。3週間に1回、負担の小さい点滴治療を受けに来られて、診察室では、ほとんど雑談だけ交わしているような患者さんや、治療をお休みして、半年に1回くらい経過観察しているような患者さんもいます。
私は、早期がんでも進行がんでも、がんがあってもなくても、すべての人の「幸せ」を目指したいと思っています。「根治」だけが幸せだと思い詰めるのではなく、「根治」よりも大事な「幸せ」があることを忘れずにいたいものです。
少し時間が経過した記事ですので、広範囲に抜粋させていただきました。すみません。
よく、現実を受け入れる、と言うような言葉使われますが、遠隔転移がある場合の受け入れ方、とも言えるかなと。
現実を受け入れることを、「もうダメなんだ」という認識を明確に持つこととされる方もいれば、「苦しい治療が待ち受けているぞ」とされる方もいらっしゃいます。
高野医師が仰せの受け入れ方は「”治らない”中で、良い状態で出来るだけ長く生きる」というビジョンをまずはしっかり持つこと、なのかと思いました。
その上でどんな治療を選択するか、または、治療をしない方法を選択するケースもあるのだと。
高野医師がお医者様としてこのような論説を公開することは、少し勇気の要ることではないでしょうか。
医師ではない私からすると、このようなお考えのお医者様は、他にも大勢おられるかも知れないなあ、という風に思えて、少し嬉しい気持ちになりました。
医療の最善ではなく、患者さんの最善を大事にしていこう、という宣言にも聞こえるからです。