#がんゲノム医療
がん遺伝子パネル検査を保険適用で実施できるタイミング 3人に1人が「適切だと思わない」と回答/オンコロ
●10~60代男女1,000人対象アンケート
●適切タイミングは「診断直後」74.8%

https://oncolo.jp/news/230804ra01

 

イルミナ社が実施したインターネット調査の結果、遺伝子パネル検査が保険診療で賄われる「固形がん患者さんで標準治療終了後」という条件に、疑問符がついた形です。

タイミングについては「もっと早くに実施すべき」との回答が多かったということです。

 

私の見解なのですが・・・・

現状の遺伝子パネル検査が無意味ということでは絶対になく、約10%で検査結果に基いた治療(先進医療、患者申出診療)が提案されています。

標準治療が終了した患者さんということを考慮すると、これは大いに希望のある結果だと思います。

検査結果からのプロセスについては改善されるべき事柄がまだまだあると思いますが、有意義な検査であることには違いありません。

 

一方、治療早期での遺伝子パネル実施については、是非とも早く保険診療で実施出来るように願っています。

標準治療前の同検査実施は、世界的に推奨される事項であり、日本は国家ぐるみでがんゲノム医療を推進しているところなのですから、これはこれでしっかり先駆けてもらいたいところです。

 

以下、3記事を追加であげさせていただきます。

 

【参考記事1】遺伝子の早期検査「有効」 がんゲノム医療で京大病院↓

 

 

【参考記事(京大病院リリース)2】一次治療(標準治療)開始前のがん遺伝子パネルに関する先進医療Bについて↓

 

 

【参考記事3】初回治療での遺伝子パネル検査、保険財政の負担「変わらない」京大・武藤教授、中外セミナーで↓

 

京大病院さんの取り組みは、

切除不能進行・再発の固形がん患者さんを対象に、

標準治療を開始する前に先進医療Bで遺伝子パネル検査を実施するという臨床研究です。

【抜粋】本研究では、専門家による会議(エキスパートパネル)による推奨治療が約61.0%(105/172)に認められ、観察期間中央値7.9ヶ月と短いものの、実際にエキスパートパネルによる推奨治療を約19.8%(34/172)の患者さんに提供できました。この割合は、現在の保険診療の条件である標準治療終了後のタイミングより約3倍と高く、初回のがん薬物治療選択におけるがん遺伝子パネル検査の有用性が示されたと考えます。

 

「難しい状況におかれた固形がん患者さん」という意味では、現状の保険診療対象と似通った状況と言えますが、こちらは「標準治療を開始する前」での評価であり、”前”の方が治療法提示が出来る割合が高いことが明白になっています。

 

私は医療者ではありませんから、あくまでも憶測になりますが、標準治療”前”ということは、これからどのような治療を実施していこうかと検討するフェーズにあるわけで、その点が”後”とは、決定的に違うポイントです。

”前”の段階で、最善の治療法を割出す試験と言うことが出来、治療の効率化に資するものとも言えます。

 

この臨床研究は、標準治療”前”の遺伝子パネル実施と同”後”実施での生存期間など治療成果に関する比較検討がなされていない点で、道半ばと言えるかと思いますが、同検査そのものの機能を考えると、当然”前”の方が良好なのでは、と考えます。

 

がん治療に関するメディアのトップランナーと言えるオンコロさんがこの調査結果を取り上げられているところから、「声を大にする必要があるよ」というメッセージを感じました。

 

以下、蛇足の蛇足。

がん医療の難しいところは、その進展において、ただひたすら患者さんの治療成果を追い求めるだけではなく、経済的合理性もまた重点的な要素となる点です。

つまり、いくら素晴らしい結果が期待出来る治療法であっても、商売上の旨味が無ければ世に出ない可能性があるわけです。

私はこの点において、いつも明治維新を想像してしまうのです。

黒船来航から開国に向けて突き進む当時日本のご時世で、それを実践へと強くいざなったものは、坂本龍馬というグレートコミュニケーターの存在と日本初の株式会社である亀山社中であったと思うのです。

 

がんゲノム医療に関わらず、日本のがん医療全体が大きな進展を遂げるためには、龍馬のような存在は不可欠かな、と思うのです。

声だけでは難しい気がしています。