【リンク↓】 配信:日刊ゲンダイヘルスケア
がん治療に大きなインパクトを与えたオプジーボをはじめとした免疫チェックポイント阻害剤ですが、単独で使用するケースでは、5人に1人にしか効かないということがわかっていました。
ところが、放射線治療との併用によって、高い効果が確認されているのです。
イミフィンジという免疫CP阻害剤が用いられた米国での試験。
対象は手術不可のステージ3局所進行非小細胞肺がんの患者さん。
リンパ節転移は認められながら、他の臓器への転移は無い状況で、まずは抗がん剤と放射線治療を同時に行う化学放射線治療を行い、病状が進行していない713人を対象に、イミフィンジ投与群とプラセボ(イミフィンジではない偽薬投与)群を比較した試験。
結果、2年後の中間解析では、無増悪生存期間中央値がイミフィンジ投与群で16.8カ月、プラセボ群で11.2カ月と有意差が現れました。
また、2年全生存率でも、イミフィンジ群は66.3%、プラセボ群は55.6%となりました。
また、5年後の長期追跡解析の結果も発表されたのですが、イミフィンジ群の全生存期間中央値が47.5カ月、プラセボ群は29.1カ月と大幅にイミフィンジ群が上回り、その効果が確実とされました。
日本でのステージ3非小細胞肺がんの標準治療は化学放射線治療となっていますが、その治療が終了すれば他に治療の手立てが無く、治療終了から5年以内に40~50%の確率で転移が見られます。
その結果、5年生存率は20~30%となっているのですが、先のイミフィンジ投与試験の場合、約43%が5年生存していることを示しています。
しかも特筆すべきは、これらの生存者の約75%は病状進行がない、つまり転移していなかったようです。
この試験を受けて、手術不可ステージ3非小細胞肺がんの標準治療として、化学放射線治療後のイミフィンジが標準治療になるつつあります。
さて、どうしてこのように放射線治療の後で免疫CP阻害剤を投与した場合”効く”のかの議論ですが、恐らく、アブスコパル効果によるものだと考えられています。
最近、わりと耳にするアブスコパル効果ですが、これは、放射線治療後に見られる奏効例で、照射した病巣だけではなく、全身のがんに対する免疫が強化された状態になるケースを言いますが、稀にしか起こらない現象でした。
ところが、これが免疫CP阻害剤の登場で頻繁に見られるようになったようです。
進行した腎臓がんやメラノーマについても、放射線治療と免疫CP阻害剤の組み合わせは有望だとされています。
化学療法後に病状が悪化していない方が対象であったり、副作用の管理は必要ですが、かなり期待の持てる療法としてこれから普及していくことと思います。