本記事はこちら↓ 【産経新聞 様】
72歳男性、大腸がん肝転移ありの方の実際にあったご質問の内容です。
かかっている病院からは、3つの選択肢が提示されて、どうしようかと悩んでおられます。
一方、相談を受けたがん研有明病院の先生は、手術も可能性はある、と仰っています。
日本は標準医療が確立されていますし、それが現状のベストであることに疑いはありません。
しかし、人それぞれ、同じがんであっても、状況は異なってきます。それぞれの方に最も合った治療を受けていくためには、やはり探求と選択なのかな、と思います。
具体的には、ネットであれこれ調べるよりは、お医者様に聞く、セカンドサードオピニオンが肝心かなあ、と思っています。
こんなブログ解説しておきながらあれですが。
【抜粋】
Q 72歳の父についての相談です。
令和2年9月に大腸がんが見つかりました。
肝転移を伴うステージ4でした。
同年11月から化学療法を開始。
大腸のがんについては化学療法で縮小したため翌年5月に腹腔(ふくくう)鏡下でS状結腸切除術を受け、取り除きました。
肝転移したがんに対しては8月から化学療法を始めましたが、過去に脳出血を患い、半身まひの状態で体力も低下しているため2サイクルで中止しました。
今年3月になり、腫瘍マーカーCEA値が上昇。
主治医から今後の治療について3つの選択肢が示されましたが、家族で話し合っても、どうしたらよいのかまったく分からず途方に暮れています。
A 大腸のがんは手術で切除したものの、肝臓に転移したがんは手術を行わなかったということですね。
化学療法を中止されたのはなぜですか。
Q 当初はフォルフォックス療法(オキサリプラチン、フルオロウラシル、レボホリナートの併用)に、ベクティビックスを組み合わせた化学療法を受けていましたが、
「好中球(白血球の一種で、細菌などと戦う細胞)減少症」と呼ばれる副作用が起きたため、オキサリプラチンをイリノテカンに変更。その後、抗がん剤を中止したのは本人の希望でした。
A なるほど。抗がん剤による治療が体力との兼ね合いで難しいと主治医も判断したのでしょう。
代わりにどんな選択肢を提示されたのですか。
Q
①何もせず経過を観察する
②オプジーボ(一般名ニボルマブ)の使用の可能性を探る
③別の抗がん剤で化学療法を再開する―の3つです。
A 経過観察とは、ご本人にとってつらい治療は行わず、代わりに緩和ケアを行うというものです。
Q 2つ目のオプジーボを使えば治癒も望めるのでしょうか。
A この薬は「免疫チェックポイント阻害剤」の一つで、直接がんを攻撃する抗がん剤と違い、免疫細胞を活用する仕組みです。
効果があるのはマイクロサテライト不安定性(MSI)検査で不安定性が認められる人だけで、大腸がんの場合、約5%にすぎません。
念のためこの検査を受けてもよいでしょうが、大きな期待はできません。
Q 別の抗がん剤という選択肢はどうですか。
A すでに大腸がんの標準治療で最初の化学療法として行うフォルフォックス療法と、2番目に行うイリノテカンを使ったフォルフィリ療法を行っているため、代替抗がん剤にも限りがあります。
これまでの点滴タイプの抗がん剤ではなく、飲むタイプの抗がん剤を使い、主に現在の状態をなるべく長く維持することに主眼を置いたものなので、経過観察の一環ともいえるでしょう。
Q 前回の化学療法でがんが見えなくなるほど小さくなり、主治医によると、経過観察でも2~3年は生きられるそうです。
A 今回は高い効果を上げたようですが、化学療法だけで治癒するのは極めてまれで、一般的に無治療の場合の平均余命は約1年、飲むタイプの抗がん剤を併用しても2年ほどでしょう。3つの選択肢のうち、つらい治療はしたくないというのであれば経過観察がご本人にとって最もよい選択かもしれません。
一方、ご家族がもっと長生きしてほしいと望まれ、ご本人にも頑張りたいとの気持ちや体力があるなら4割ほどの確率で治癒も望める手術を選ぶこともできます。ただ切除が可能なのかどうかは確認する必要があります。ご家族ですべての選択肢をよく話し合ってみてください。
がん研有明病院消化器センター長・大腸外科部長の福長洋介医師