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【抜粋】

Q 84歳の母について
昨年7月に直径2センチの乳がんが見つかる

 

12月に右乳房全摘術
ホルモン受容体陽性で腋窩リンパ節8個に転移あり
組織グレードは悪性度が最も高い3

 

高齢のため術後は抗がん剤治療ではなくホルモン療法と放射線治療を受ける予定だった
ところが今年1月にCTで「間質性肺炎の可能性があり、放射線治療で悪化するリスクが高いため、放射線治療を取りやめる」と中止

 

乳がんの再発が心配
放射線治療をやってくれる病院を探して転院させたいと考えているがどうか

 



A 乳房全摘出術後、胸壁やリンパ節転移が起きやすい場所に放射線治療を行うことがある
「局所再発」予防の治療でリンパ節転移が多くあった場合にはきちんと放射線治療を行うのが標準

 

しかし、放射線治療によって肺に炎症が起きる「放射線肺臓炎」などの副作用があるので、治療目的と、期待される効果と、起こりうる副作用を十分に理解してそのバランスを慎重に判断する必要

 

放射線科医と呼吸器内科医と担当医が合議で「放射線治療はしないほうがよい」と判断したということなら、私もその判断が妥当なのだと思う

 

 


Q ホルモン療法だけで大丈夫か
担当医はホルモン療法でさえ「副作用がきつければやめてもよい」と消極的

 

 

 

A 主に遠隔転移を防ぐために行うのが薬物療法
お母さまの乳がんはホルモン療法の効果が期待できるタイプ
抗がん剤という選択肢もあるが年齢も考えると無理はしないほうがよい

ホルモン療法でも骨折しやすくなるなどの副作用があり、それによって命を縮めてしまう可能性もある

 

マイナスを上回るだけのプラス(治療効果)があるのか、という視点で考える必要

 

 


Q 遠隔転移をきたしたら根治は難しいと言われた、とにかく再発が心配

 

 

 

A お母さまを思う気持ちはわかるが乳がんの再発のことだけを考えるのはバランスを欠いている

 

84歳の日本人女性の平均余命は約9年、乳がんがなかったとしても残された時間は有限
ホルモン療法を受けることで乳がんで亡くなる可能性を5%ほど減らせるが、乳がん以外の原因で亡くなる可能性のほうがずっと高い

 

乳がんが再発するかどうかで判断するのではなく、いい状態で生きて残された時間を自分らしく穏やかに過ごすためにはどうするのがよいのかを考えるほうがよい

放射線治療や抗がん剤治療は行わずホルモン療法のみを、負担にならない範囲でやっていくのがよいのではないか

 

やるべき治療はやっているので、この先、再発のことはあまり考えすぎず、お母さまとは、今まで通り、日々の出来事など、楽しくお話しするのがよい

回答は、がん研有明病院の院長補佐・乳腺内科部長、高野利実医師が担当