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配信:ヤフーニュース
 
【抜粋】
患者さんの口腔内は、ほとんどの場合「からから」に乾いています。特に、今のような冬の時期は乾燥しやすい環境です。 ただでさえ大気が乾燥しているなかで、暖房による湿度の低下、さらに最近は暖房のためにエアコンや電気毛布などを用いていますが、これらは石油ストーブの燃焼時のように水分を出さないので、より乾燥しやすくなっています。
 
 次に、患者さんの多くは、起きているときは鼻呼吸でも、眠っているときは口呼吸になっています。眠っている、あるいは意識レベルが下がってくると口呼吸の時間が増えて、前述のエアコンによる空気の流れの影響も加わり、口のなかが「からから」になるのです。
 
さらには、酸素投与を受けている患者さんの場合は、その酸素の流れによって、さらに乾燥していってしまいます。酸素には加湿していないことが多いので、ほぼ湿度0%の気体が流れていきます。過酷な状況ですね。このような理由で、患者さんの口腔内は「からから」です。
 
そんな患者さんの口腔内に、「のみや水」という水分を多く含んだゼリーと保湿ジェルを混ぜて、モアブラシなどの柔らかいブラシにつけて、口腔内全体に広げていきます。手袋をした指にのせて広げることもあります。 その時に舌の周囲にある筋肉や頬の筋肉も少しずつほぐしていきます。そうすると、唾液の分泌も促されて、より湿ってきます。
 
口腔内が湿ってくると、舌の上に苔のように付着している舌苔と呼ばれるものがあるときは、自然にはがれてきます。舌苔は、細菌や食べ物が舌の上にこびりついたもので、口臭の原因などになっていますので、それが自然に取れてくると、患者さんご本人はもちろん、ご家族もとても喜びます。 舌苔を固い舌ブラシでそぎ落とすようなことは避けます。傷がついてしまいますし、患者さんも痛いので、次回の口腔ケアが困難になってしまうからです。 
 
 このように口腔内が湿ってくると患者さんはとても楽になります。がんの終末期の方も、口腔内が乾燥していることがほとんどですので、保湿ジェルを塗るだけでも、患者さん自身はとても楽になります。 がん性疼痛のコントロールだけが緩和ケアではなく、このように口腔内の保湿だけでも症状緩和になりますので、「緩和口腔ケア」と呼ぶこともあります。