2021.11.19日刊ゲンダイ

 

【抜粋】

強力な磁石と電波を使用して体の中をさまざまな断面で見ることのできる、MRIと一体となった放射線治療装置で、手術や抗がん剤で小さくなったがんの塊や呼吸で動くがん病巣を見ながら、体の外から精密に放射線照射できる。この治療機にはコバルトを用いたγ線を用いるタイプとX線を用いるタイプがあるが、後者のほうが素早く照射できて線量分布も良くなる。

強力な磁石と電波を使用して体の中をさまざまな断面で見ることのできる、MRIと一体となった放射線治療装置で、手術や抗がん剤で小さくなったがんの塊や呼吸で動くがん病巣を見ながら、体の外から精密に放射線照射できる

人間は静かに横たわっていても呼吸もするし脈も打つ。そのため肺や腸、胃などの内臓は常に動いている。中には呼吸などで3センチ以上、動くがんもある。これまでの放射線治療では直前にCTで位置を確認して照射しているが、メリディアンは照射中にMRIで位置を確認できるため正確に照射できるという。

「メリディアンは放射線照射中にリアルタイムで照射部位および、その周辺臓器の解剖学的情報を得ることができます。その情報をもとに腫瘍の動きに合わせて照射したり、照射を止めたりできるため、より正確な放射線治療が可能になるのです」

「おかげで、これまでより強い線量の放射線を、副作用を気にせずにがんの塊に向けて照射できます。これまでは放射線を照射するのが難しいと思われたがん患者さんでも放射線治療できる可能性が出てくるということです」

「放射線は通常、数週間にわたって行われます。問題は、その治療期間中に体重が落ちたり、治療が効いて腫瘍の縮小が生じた場合です。正確に放射線治療を行おうとすれば、改めて照射方法などを検討しなければなりません。これを適応放射線治療と言います。それを行うには治療計画を見直さざるを得ず、そのために数日を要する場合があります。しかし、メリディアンなら、毎回の治療ごとに患者さんのMR画像を撮影しているため、放射線の量や当てる方向を決めるための治療計画に、その画像をすぐに使用することができるからです。従来なら数日かかった治療計画も1日で終えることも可能です」

メリディアンなら、転移しやすい肺や肝臓の照射もMR画像で呼吸に合わせながら照射するため、正常組織のダメージを少なくすることができる。放射線治療は、がんの3大標準治療に数えられながら、正常な臓器にも影響を与えることから補助治療的な役割に甘んじてきた。メリディアンの登場でそれが覆るかもしれない。