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がん治療用ウイルスがスキルス胃がんに奏効|がん|学会レポート_消化器_臨床医学|医療ニュース|Medical Tribune (medical-tribune.co.jp)
配信:MedicalTribune20210727
悪性神経膠腫(脳腫瘍の一種)に対して効果が見られたとのことで承認された、がん治療用ウイルスG47Δを製剤化したテセルパツレブ。
他の部位のがんについての効果も期待されて試験が実施されていますが、スキルス胃がんへの良好な効果がマウスレベルで確認されたとのことです。大きなトピックだと思います。
更に免疫療法との併用で、治療効果の増強が期待出来るようです。
早く進めてもらいたいものの一つです。
【抜粋】
まずスキルス胃がんを含む9種のヒト胃がん細胞株(MKN1、MKN45、MKN74、OCUM-1、Kato-Ⅲ、NUGC-4、44As3、HSC-39、HSC-60、後ろの3種がスキルス胃がん細胞株)を用いてin vitroにおけるテセルパツレブの殺細胞能およびウイルス複製能を検討した。その結果、投与3日以降でいずれの細胞株においても細胞数が対照群(ウイルスなし、以下同)よりも有意に減少し、十分な殺細胞能および複製能が認められた。
次に、スキルス胃がんを含む3つの皮下腫瘍マウスモデル(MKN45、MKN74、44As3)を作製。テセルパツレブの腫瘍内投与を行ったところ、全モデルで対照群に対する有意な腫瘍増大抑制効果が認められ(いずれもP<0.01)、体積が200mm3以上の大きな腫瘍でもその効果は一貫していた。
さらにルシフェラーゼ(発光物質)を発現させ、マウス体腔内の腫瘍発育を可視化・定量化する44As3-lucを用いて、スキルス胃がんの臨床的特徴を有する同所腫瘍モデルを作製。このモデルでは早期に腹水および腹膜播種が生じ、死に至るが、テセルパツレブを腫瘍内投与したところ、腫瘍増大を有意に抑制し、生存期間が延長した(いずれもP<0.01)。
同様にMKN45-lucおよび44As3-lucを用いて胃がんおよびスキルス胃がんの腹膜播種モデルを作製。テセルパツレブを腹腔内投与したところ、有意に腹膜播種の増大を抑制し、生存期間を延長させた(いずれもP<0.01)。
同氏は「腹腔内全体に投与したテセルパツレブは、腹腔内の腫瘍に選択的に分布していた」と指摘。同薬ががん細胞のみに感染し、殺細胞作用を発揮していることを視覚的に確認できたという。
最後に、同氏らはマクロファージに着目し、フローサイトメトリーおよびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を用いてテセルパツレブ投与に対する腫瘍内免疫反応の変化を検討。投与2日後の腫瘍内免疫細胞をフローサイトメトリーで解析したところ、テセルパツレブ投与群では炎症性のM1型マクロファージの割合が有意に増加し(P<0.05)、免疫抑制性のM2型マクロファージは有意に減少する(P<0.001)、炎症性マクロファージへの極性化が起きていたという。
PCR解析においては、テセルパツレブ投与群でM1関連遺伝子であるCD86の発現が有意に上昇(P<0.001)、M2関連遺伝子であるArg1およびMrc1の発現は有意に低下(それぞれP<0.01、P<0.05)。フローサイトメトリーの解析と同様に炎症性マクロファージの極性化が認められた。
同氏は「テセルパツレブ投与に伴う免疫抑制性の腫瘍微小環境の改善が殺細胞作用を高めている可能性があり、高い免疫賦活作用を発揮することが示唆された」との見解を示した。