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マクドナルド化する医療「それが、あなたに最適な治療なのか?」|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト (newsweekjapan.jp)

配信:Newsweek20210721

 

【抜粋】

(1)

「病院側から、患者に治療法の選択肢の説明があってもいいと思ったんですが」。そう投げ掛けても、瀬戸は顔色ひとつ変えない。

 

「金田さんの主張も理解できますし、理想的には患者さん一人一人がしっかりと説明を受けて、自分で治療法を選べるほうがいいと思います。しかし、それを支えるような制度が現在の日本にはないのです」

 

金田氏の主張とは、病院側から外科手術と放射線治療の両方をきちんと説明した上で患者さんに選択させることは出来ないものなのか、というもので、下がその答えです。

現状のがん医療を浮き彫りにしているものだと思います。

 

要は、これから治療に臨もうとするがん患者さんに治療をアレンジ、コーディネートしてあげる人がいないということだと思います。

 

このことは、一般に医療外の人間が持っている医療とかお医者様に対しての役割感とは、少し離れていますよね。

お医者様にまかせていれば大丈夫という信頼、もう一歩進んで、腫瘍内科の先生の言うことを聞いていれば大丈夫、という人って多いですからね。

 

でも実は、最初に罹った科の標準治療が第一にされているということを、理解しておいた方が良いのかも知れません。

 

(2)

この比較表を作成した大船中央病院放射線治療センター長(放射線医師)の武田篤也は、危機感を覚えている。日本の放射線治療が、欧米諸国に比べて劣っているわけではない。「もっと放射線治療のメリットを広めていかないと、『癌は切除するもの』が常識となって、本来、放射線を受けたかった人が手術に回されていく」
 

大船中央病院の武田先生は、これまで多く取り上げましたので、私には馴染みがあります。

言い方にはちょっとひっかかりを感じるのですが、やはりこういう現象が結果的に起きている場合があるということです。

 

「がんを治療する」という目的があって、その手段として放射線治療がベストなのか手術がベストなのかは人ぞれぞれで違う。そしてそこでは(1)のようなことが起きていて、その人にベストな治療が提示されるわけではなく、ただその科の絶対正義であるマニュアルに基づいた治療方法が提示され”がち”なわけです。

 

(3)

そこに日本独特の、全国で一本化された診療報酬制度が「総額の上限」として機能し、医療費の抑制に成功する。2011年以降も、国民医療費はGDP比8%以下の水準で推移している。

その決定システムには、政官業の微妙な力学が働いている。まず、官(財務省)が医療費の引き下げを要請するが、一方で業(医療界)が引き上げの必要性を訴える。すると、官(厚生労働省)が調整し、政(内閣)が妥結策を最終決定する。この政官業のトライアングルがバランスを取り、医療費を一定の比率に保つ。

だが、この決定過程には、医療の中心にいるはずの患者の視点が欠落している。そして、一見すると均衡しているかに見える医療は、「患者不在」のまま、その中身が大きな変化を遂げることになる。

 

医療費、あるいは財政のテーブルで医療を見ると、ここの結論にあるように「患者不在」となっているわけです。よくわかります。

金田氏が「静かなる糾弾」とでも言うべきところは、まさにここなのかなと思いました。

患者不在のまま、高効率な治療マニュアルとして存在しているのが標準治療であって、確率的には治る人は多いと言えるのだが、患者さん1人1人に適している治療には程遠い場合が多々あるじゃないか、と。

 

このことで2つを思いました。

高校生くらいの頃の期末テストなどで、クラス平均点が表示されたとします。平均点はクラスの点数と言うことが言えますが、実際にその点数を取った人は極少数になるでしょう。平均というのは、集団と個人で考えると、個人にはあまり意味のない数字になります。

 

もう一つは昔よくやった麻雀。確率的に麻雀を打って行こうとすると、どうしても局単位で早く上がることを重視しますが、それでやると、実はその日一日での勝ち負けという点では弱い。勝負どころでどれだけ大きい手を狙って上がれるのかがむしろ大事。つまり、駆け引きの要素の方が大事ということです。

 

まあ、これは私なりのしょうもない考えですが、何か集合体を1つのものととらえて、それが良くなるように手を打っていても、1人1人が完全に良くなるというわけではないよ、ということです。100%全員が治る方法なら良いのです。しかし、現状の標準治療は、そこまでは行っていません。

 

このようなことを言うと、標準治療とて、当てもんなのかと思われるかも知れませんが、私が感じるところ、高確率な当てもんだと思います。

また、患者さん1人1人への治療カスタマイズ=個別化は、日本が得意としつつあるゲノム解析など確実にその流れが発生しています。ですから、やがて標準治療と合流し、更に当たる確率がかなり高まるものなのだと思っています。

ですから、標準治療は悪くなどはないのですよ。まだまだ行く手があるということで、その行先について、金田氏は本にしてまで訴えておられるのでしょう。

 

ただメインは、サバイバーさん自身は、時間を急ぎます。

「標準治療とはこういう現状だから、しっかりと患者が情報収集して選択していかないと!」

というアドバイスです。

 

とても大事なことです。

がんサバイバーとしての率直な叫びでもあると思います。

この本は必読です。