本多孝好 - MOMENT
- 本多 孝好
- MOMENT
★★★★★★★☆☆☆ 7
(Amazonより内容)
死ぬ前にひとつ願いが叶うとしたら…。病院でバイトをする大学生の「僕」。
ある末期患者の願いを叶えた事から、彼の元には患者たちの最後の願いが寄せられるようになる。
恋心、家族への愛、死に対する恐怖、そして癒えることのない深い悲しみ。
願いに込められた命の真実に彼の心は揺れ動く。ひとは人生の終わりに誰を想い、何を願うのか。
そこにある小さいけれど確かな希望―。静かに胸を打つ物語。
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伊坂幸太郎の「死神の精度」のような、大まかなストーリーがあっての中の短編集。
素直に面白い。
それぞれの短編のストーリー展開が面白いというよりも、それぞれの話に出てくる人物の設定や考え方に引き込まれる。死を間近に感じたものの思い。
金や生に対する欲求といったものを考えなくなったとき人が何を欲するか。
思わず引き込まれる。
そして特に感じたのは、主人公の大学生の会話のうまさ。
ユーモアある切り返しや受け答えなど、作者の技量にセンスを感じる。
生と死のシーンを静かに描写しているこの作品、
印象に残ったのはある医者のこのセリフ。
医療は進みすぎた。
とっくに死んでいるべき人間を医学的には生きている状態にしておくことが出来る状態にしておくことが出来るまでに進んでしまった。
患者が苦痛しか感じないようなその状態は、自然に生まれたわけじゃない。
進みすぎた医療技術が作り出したんだ。
なるほど、そういう切り口もあるのかと感心する。
こういうまったく気付かなかった視点から描くってすごい。
もしあなただったら死ぬ直前に何をお願いする?
僕には想像がつかない。