Q・筋トレをこの2週間で1日おきに行っているので、筋肉量が増えたかどうかわかりませんが筋力がついた実感はあります。筋トレはもっと早くやっていればよかったと後悔するほどです。

 

筋力グラフ

筋トレでしたら、筋力グラフをつけることをおすすめしたいと思います。

グラフをつけると、筋力がどんどん上がっていくのがわかるので、励みになります。

下図は私のグラフですが、チェストやレッグのウェイトが3ヶ月で3倍も増加したのがわかります。

ただし、有酸素運動能力(Vo2Max)は変わりませんでした。体重が3Kg増加し、体脂肪率が2%も増加しました。

体脂肪率が増えた原因は、マシントレーニングのあとで水泳をしたせいだろうと思います。

水泳をすると、ものすごくお腹がすきます。適度な空腹はダイエットに大切ですが、猛烈な空腹は逆効果です。

 

 

Q・カタボリックは筋肉が異化するので、何か食べてから運動することで筋肉の分解を防ぐと言う人と、体脂肪は血糖が低下すると溶け出すので、空腹で運動する方が効率的と言う人がいます。どちらが本当でしょうか?

 

たしかに、脂肪の燃焼には糖が必要ですし、極端なダイエットで筋肉が消耗することがありますが、普通のダイエットで筋肉が消費されることはまずありません。

何か食べないと筋肉が分解すると心配する人は、糖新生の仕組みや脂肪燃焼の仕組みを少し誤解しているのではないかと思います。脂肪燃焼の仕組みと糖新生について少し整理してみたいと思います。

 

糖がないと脂肪が燃えない?

脂肪燃焼の仕組みはつぎのようになっています。

脂肪は燃えにくいので、筋肉に取り込まれるとまず最初に酸素と結合します。ただし、フルに結合すると燃えてしまうので、半分だけ酸化します。そのことをベータ酸化といいます。

 

 

ベータ酸化された脂肪は、アシルCoAを経てアセチルCoAになり、糖から得られるピルビン酸によってTCA回路に運ばれます。つまり、ブドウ糖は酸素がなくても燃えますが、脂肪は酸素と糖がなければ燃えません。

 

ピルビン酸は消費されない。

ただし、ピルビン酸の役割はアセチルCoAを運搬するだけなので少量でよいのです。

もちろん、絶食などで糖が途絶えると、アセチルCoAが運べなくなり脂肪が燃えません。

アセチルCoAが細胞内にどんどん溜まっていきますが、この状態をベータ酸化の亢進といいます。

ベータ酸化の亢進がつづくと、行き場がなくなった脂肪がケトン体になって血中に放出されます。

 

ケトン体

ケトン体の血中濃度は、絶食や激しい運動、重篤な糖尿病患者で高くなります。

ケトン濃度は、ケトン尿検査紙で調べることができます。下の写真は起床後1時間おきにケトン体を測定したものです。

 

強いダイエットでケトンが出ます。激しい運動でもケトンが出ます。

 

Q・糖新生が起こっているのかどうかは自分ではわかりませんが、判断の目安はあるのでしょうか。

 

血液中の糖が、糖新生由来か炭水化物由来かを調べるのは困難ですが、血中のイスリンとグルカゴンのホルモンバランスを調べると見当がつきます。

また、人体の1時間あたりの消費量がわかっていますから、食事の摂取量と経過時間から計算することもできます。

アトキンスダイエットではケトン試験紙でチェックして、糖新生の目安にします。

ケトン試験紙はアマゾンで100本入りが2,300円で買えます。

 

筋肉が減る

糖新生の主な材料はアミノ酸プールのアミノ酸です。筋肉が糖新生の対象になることはまずありません。

たとえば、骨には破骨細胞と骨芽細胞があって、破骨細胞が骨を破壊し、骨芽細胞が骨を常に再生しています。筋肉も同じように分解と再生が繰り返されています。

筋肉は、空腹であってもなくても分解されます。そしてアミノ酸プールにプールされます。

下図は蛋白質の代謝図です。身体のパーツごとに蛋白質の必要量を見ていくといろいろなことがわかります。

 

ニュートリー社 「キーワードでわかる臨床栄養」から引用

 

・人体は骨も皮も内臓も蛋白質でできていて、毎日250gの蛋白質が合成されています。

・酵素やホルモンを含めると、1日の総需要は320gです。

・毎日320gの蛋白質が分解されていますが、分解されたアミノ酸がすぐに再合成にまわるので、筋肉や内臓が減ってしまうわけではありません。

・筋トレをすると筋繊維が破断しますが、血中アミノ酸で修復されるごとに太くなります。

・糖新生もアミノ酸を材料に行われます。

 

空腹の運動

マラソンランナーは、胃を空っぽにして走ります。

 

 

42.195Kmを空腹のままで5時間走っても血糖値が低下してしまうことはありません。

ランニングで筋肉が使うエネルギーは筋グリコーゲンです。血中の糖を取り込まない仕組みになっているので大丈夫です。

それでも、5時間も空腹のまま走っていると、次第に血糖値が低下してきます。実際のマラソンではドリンクやバナナを食べるので、血糖は低下しませんが、もしも、何も食べなかったら、糖新生が始まるかもしれません。糖新生はどのくらいの量が起こるのでしょうか。

 

糖新生とは、脳のエネルギーが途絶れないように、肝臓が主に血中のアミノ酸から糖を作り出すことです。アミノ酸2gから1gの糖ができます。

血糖の維持に必要なアミノ酸は、5時間で40g程度ですから、血中には充分すぎるアミノ酸がプールされています。

昔、人類が狩猟をしていた頃は、1日2食で1日中走りまわっていましたから、10時間くらい走っても大丈夫なようにできているのです。

脳はまた、糖のほかにケトン体をエネルギーにすることができます。筋肉もケトン体を使うことができます。

 

脳のエネルギーは幾重もの方法で確保されていますし、筋肉が脳のエネルギーを横取りしないようにできているので、よほどのことがないかぎり糖新生のために筋肉がつぶされるなどということは起こりません。筋肉は2gつぶしても1gの糖しかできませんから、筋肉をつぶすのは大損です。そんな非効率なことは余程のことがないかぎりしません。

何か食べないと筋肉が分解されると心配するのは、心配しすぎのように思うのです。