カタボリックホルモン
筋トレ派の人たちは、必ずカタボリックホルモンの話をしますから、そこから話を始めることにしましょう。
カタボリックホルモンとは、副腎皮質から分泌されるホルモンでコルチゾールのことです。
コルチゾールはストレスホルモンで、長い空腹や強いストレスがあると分泌されます。
コルチゾ-ルには蛋白質を分解する作用があるので、このホルモン濃度が高まると、筋肉がアミノ酸に分解し血中に放出されます。
肝臓はこのアミノ酸からブドウ糖を合成して脳に供給します。糖新生です。
つまり、カタボリックホルモンは脳のエネルギーを途絶えさせないための安全装置でもあるわけです。
それでは、どのくらいの空腹がつづけばコルチゾールが分泌されるのでしょうか?
また、筋肉トレーニング中でも、筋肉に強いストレスがかかるとコルチゾールの血中濃度が高まります。
せっかく筋肉を大きくしようとしているのに、なぜ筋肉を分解するコルチソールが分泌されるのでしょうか?
誰がそんな無茶な指令を出すのでしょうか?
これらの問いに答えるには、伊勢神宮とアミノ酸プールを話をしなければなりません。
しかし、話が長くなります。
何か良い方法がないものかと考えていたら、あるサイトで良い図を見つけました。
名古屋記念病院・栄養サポートチームの栄養マニュアルで、引用自由となっていましたので、引用します。
この図は、食事をまったくしないで、空腹をつづけると、肝臓に貯蔵されているグリコーゲンが18時間くらいで枯渇することを示します。
肝グリコーゲンが枯渇すると、それを補うために蛋白質の分解がはじまります。
肝臓のグリコーゲン貯蔵量は約80gです。
安静時の糖の消費量が1時間あたり4g、日常生活で6gですから、計算すると、肝臓は13~20時間血糖を維持できることがわかります。
実際には、肝臓グリコーゲンが枯渇する前に蛋白質の異化が始まり、体蛋白の30%が失われると生命維持が困難になります。
アミノ酸プール
エジプトのピラミッドやギリシャのパルテノン神殿、ローマのフォロロマーノなど石造建造物は遺跡ですが、
伊勢神宮や出雲大社は式年遷宮によって常に立て替えられるので遺跡にはならず、同じ形で永遠に続きます。
人の身体も同様です。
人体は骨も皮も、筋肉も内臓も蛋白質でできていて、すべての組織は常に分解、再生を繰り返しています。
人の身体も伊勢神宮と同じように生きたまま生まれ変わることによって若さを保ちます。
新陳代謝によって分解される蛋白質は1日に約230gです。
分解されたアミノ酸は血液中にプールされ、再利用されます。
血液は全身の細胞に酸素と栄養を送りますが、全身を巡って帰ってくると一部が破壊されています。
破壊された血液は、アミノ酸プールのアミノ酸を材料にして再合成されます。
食事を消化するには消化酵素が必要です。この消化酵素は、アミノ酸を材料にして作られ、胃壁から分泌されます。
分泌された酵素のうち90%は腸管から再吸収されます。
体蛋白は常に分解と再生が繰り返されて若さを保ち、かつ、血液や消化酵素に形を変えて利用されています。
新陳代謝や造血、消化酵素などに必要なアミノ酸の量は1日あたり230gです。
厚生労働省の栄養基準では、成人男子の蛋白質摂取量は60gになっていますが、このことから、体内で循環しているアミノ酸の1/4を食事で補えばよいことがわかります。
つまり、蛋白質は1日に230g異化していますが、その大部分は形を変えながら再利用されており、そのごく一部を食事で補えばよいのです。
さて、筋トレをすると筋肉に強いストレスがかかりコルチゾールが分泌されて、筋肉が分解します。
筋トレが終って2時間ほどすると、成長ホルモン濃度がピークになります。
成長ホルモンはアナボリックホルモンですから、筋トレが終わってから1時間半前までにプロテインを飲めば効果的です。
コルチゾールによって筋肉が破壊され、成長ホルモンによって再生されるので前よりも強い筋肉になります。
プロテインはトレーニング前に飲んでもかまいませんが、効果的なのはトレーニング後です。
プロテインは血液中に充分な量のアミノ酸がプールされているので、飲まなくてもかまいません。
プロテインを多量に摂ると、余分なアミノ酸が脂肪になるので太るだけです。
プロテインを飲まなくても、トレーニングをすればアナボリックホルモンが分泌し、血中アミノ酸を材料にして筋肉が増大します。
体蛋白は1日に230gも分解しているので、プチダイエットなどで絶食するとその再生ができなくなり、筋肉が異化していきます。
筋肉の異化は絶食後20時間をすぎた頃から始まります。
人は2食性の動物です。
朝夕2回の食事で生きていけるような内臓構造になってしています。
ですから、空腹時間が12時間続いてもまったく困ることはありません。
「8時間ダイエット」で、食べない時間を16時間に設定したとしても、普通に食べているかぎりは筋肉がやせ細っていくことなどありません。
骨は、破骨細胞と骨芽細胞によって新陳代謝をしています。
筋肉は、カタボリックホルモンとアナボリックホルモンの作用で新陳代謝をしています。
空腹とカタボリックはメカニズムが違うので、条件をそろえて考えなければならない問題だろうと思います。
つづく...