ヒューマンカロリーメータの実験



ダグラスバッグをつけて呼気中の酸素と二酸化炭素の濃度を測定すると、身体の中で脂肪がどのくらい消費されたか、糖がどのくらい消費されたかがわかります。
ヒューマンカロリ-メーターはダグラスバッグを大掛かりにしたものです。

気密室に人が入り、気密室に流出入する空気のガスを調べることによって、人体内で消費される糖と脂肪の量を読み取ることが出来ます。


下図は、最大酸素摂取量の40%の負荷で運動を行った場合と、70%の負荷で運

動を行った場合の、糖質の消費量を測定したものです。
その結果、同じ400Kcalの運動をしても、低負荷の運動では糖の消費が少なく、高負荷の運動は糖の消費が約2倍にもなることがわかります。



Fig1


この実験では、男女8人に2日間ずつ気密室に入ってもらい、最初の日は低負荷の運動をしてもらい、次の日には高負荷の運動をしてもらって、24時間の脂肪の消費量を比較しました。


40%負荷の運動で400Kcalを消費するには、ウォーキングマシンで約3時間くらい歩かなければなりません。
一方、70%負荷の運動とは、ランニングマシンで約1時間10分ほど走ると、400Kcalが消費できます。

このような運動をしてもらって、24時間の脂肪の消費を測定した結果が下図です。



Fig2


この実験結果は、

男性は、低負荷の運動をした日は脂肪の消費がやや多く、高負荷の運動をした日は脂肪の消費は少くなっています。

一方、女性の方は、低負荷の運動でも高負荷の運動でも、一日の脂肪の消費量はあまり変わりませんでした。


この結果、この実験では、低負荷の運動であっても高負荷の運動であっても、消費カロリーが同じであれば、脂肪の燃焼量はほぼ同じだという結論が導き出されました。


有酸素運動無用論者が、高負荷のマシントレーニングをして、たとえ糖をたくさん消費したとしても、一日の消費カロリーが同じであれば、脂肪の燃焼量は変わらないのだと主張しますが、その根拠の1つがこの研究です。


しかし、実は、この実験結果だけで、有酸素運動でもマシントレーニングでも消費カロリーが同じであれば、脂肪の燃焼量は同じとはいえないのです。


ある女性が、ジムに通いはじめて筋肉がついてきたけど、脂肪はちっとも減らないし、体重も減らない。私はほっそりした身体つきになりたいのに、なんだか身体がごつごつしてきたと悩んでいましたが、それは、マシントレーニングと有酸素運動とでは、運動の目的が違うからなのです。
消費カロリーが同じであれば、低負荷の運動でも高負荷の運動でも結果は同じではないのです。

上の図でも、男性の場合、低負荷の運動をした日は脂肪の燃焼量が多く、高負荷の運動をした日は脂肪の消費が20%ほど少なくなっています。

高負荷の運動は、筋肉が肥大しやすく、脂肪の消費が少ないのです。
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筋肉のエネルギー源
上の実験では、40%負荷の運動と70%負荷の2つの運動だけで比較していますが、有酸素運動については、古くから多くの研究がなされています。
下図はウォーキング、スロージョギング、ジョギング、ランニングとスピードを上げて行くとき、つまり、負荷が大きくなるにつれて筋肉が使用するエネルギー源の比率が変わっていく様子を表しています。


筋肉は安静時には脂肪だけを使用しています。

そして、スピードを上げていくにつれて、筋肉はパワーを上げるためにグリコーゲンを多く燃やします。
つまり、ウォーキングからスロージョギング、ジョギングへとスピードを上げるにつれて、脂肪の消費量が増えていきますが、時速8Km/hくらいを境にして、それ以上スピードがあがると、脂肪の消費がむしろ少なくなっていきます。
これは脂肪の燃焼速度が遅いために、ランニングスピードを上げると、燃焼速度が間に合わなくなるためです。



Fig3



糖質は脂肪になるが、脂肪から糖質はできない

糖質は、余れば脂肪になって体内に蓄えられますが、いったん脂肪になったブドウ糖は二度と再びブドウ糖に戻ることができません。

私たちのダイエットが難しいのは、脂肪と糖の間に可逆性がないからです。

マシントレーニングでグリコーゲンを使ったら、食事で炭水化物を摂らないかぎりグリコーゲンを回復できません。脂肪でグリコーゲンの回復はできないのです。

もしも、体脂肪でグリコーゲンを回復できるのだったら、私たちのダイエットは非常に簡単になるのですが、マシントレーニングで使ったグリコーゲンを脂肪で穴埋めすることはできないのです。
ですから、脂肪を減らしたいのであれば、なるべくグリコーゲンを使わないで、脂肪を燃やす運動をするの方が得なのです。


マシントレーニングは、脂肪の燃焼の点では損な運動です。

脂肪は酸素がなければ燃えませんから、有酸素運動の方が得なのです。
ランニングで言えば、スロージョギングや軽いジョギングが単位時間あたりの脂肪の燃焼量が多くなり、時速8m/h以上では、スピードを上げれば上げるほど時間当たりの消費カロリーは大きくなりますが、脂肪の燃焼量が小さくなります。


上の実験で、Fig2を見れば、男性の場合、高負荷の運動をした日の脂肪の消費量が20%ほども少なくなっています。高負荷の運動は損なのです。


ダイエットの基本は食欲との戦いです。

ダイエットの基本は摂取カロリーを適正にすることです。

しかし、食欲に勝てるわけがありませんから、いかに上手に食欲と折り合うかがたいせつです。

そして、より効果をあげるには、運動によって消費カロリーを増やします。

そのような運動においては、できるだけ脂肪を多く燃やす運動をする方がより効果的であるわけです。

マシントレーニングや100mダッシュなどは、いくら消費カロリーが大きくても、脂肪は殆ど燃えていないので、食欲の点では損な運動なのです。


このように考えると、一般のダイエットでは、運動が高負荷でも低負荷でも消費カロリーが同じであれば、脂肪の消費量が同じになるなどという結論にはならないのです。

体脂肪からグリコーゲンを合成できないのですから、マシントレーニングでいくら消費カロリーを大きくしても、体脂肪が減らないのです。