食塩を取りすぎると高血圧になります

塩分の過剰摂取が高血圧の原因とされた最初の実験は、1953年に行われたラットの実験だそうです。
その実験では、ラットに毎日20gの食塩を与え、飲み水にも1%の食塩を加えたところ、6ヶ月間で10匹のうち4匹が高血圧になったというものです。

さらに、1960年に、アメリカ軍の医師が日本人に高血圧患者が多く、特に東北地方の日本人が他の地方の人と比べて高血圧症の発生率が高いことつきとめました。
当時、東北地方の人の1日の平均塩分摂取量は27gでした。このため、塩分の過剰摂取が東北地方に高血圧患者が多い理由と結論づけられました。


その後、減塩の必要性がことあるごとに叫ばれ、厚生労働省は2000年の「健康日本21」で、塩分摂取を1日10グラム以下にするよう指導を始めています。


一方、食塩が本当に高血圧症の原因なのか疑問を抱いた研究者がいました。
実際の医療現場で、1日10gを目標に減塩食の指導が行われていますが、患者の血圧が下がらないのです。
ある臨床実験では、1日10gでは効果がないので、1日5gの減塩食にし、さらには1日3gにしても血圧が下がらないという結果がでました。


1988年に、食塩と血圧の関係について国際的な調査がおこなわれました。
これは世界中の研究機関が約1万人を対象に、食塩摂取量と血圧との関係を調べた大規模調査です。
その結果、食塩の摂取量と高血圧症の間に、直接的な関係はなく、高血圧は生活習慣や食生活全般に関係すること、食塩だけが原因とはいえないとの結論がでました。


DASHダイエット

DASHダイエットは、アメリカの研究機関が開発した高血圧患者のための食事療法です。
私は若い頃から肥満していて、高血圧のために
降圧剤を数年間飲んでいました。
降圧剤は非常に強力で、飲むとすぐに最高血圧が正常範囲まで下がります。

ただし、最低血圧はあまり下がりませんでした。
また、血圧が下がる
代わりに、心拍数が上がってひどいときには心臓がどきどきすることがありました。


10年ほど前に、アメリカのダイエット情報を検索しているときに、偶然見つけたのがDASHダイエットです。

アメリカの心臓肺血液研究所が発表したDASHダイエットの英文サイトを読んで、そのとおりに実行してみることしました。

そしたら、2週間で血圧が下がりはじめました。


わが国の塩分摂取の目標は7gです。
わが国の総合病院の減塩食は1日の塩分摂取量が5gです。

DASHダイエットは4gです。

DASHダイエットは、アメリカで発表されてしばらくして日本でも紹介されましたが、日本の医師が翻訳したDASHダイエットは、内容がまったく日本式に書き換えられていました。目標摂取量が7gと紹介されました。


また、DASHダイエットのもっとも良いところは、無理のない減塩生活を過ごすためのノウハウとレシピが詳しく書かれていて、そのとおり実行するだけで、本当に血圧が下がってしまうのですが、日本の医師が翻訳した本は肝心のレシピが省かれて、普通に見る日本式の高血圧患者のための本でした。


DASHダイエットのポイントは2つ
1つは、塩断ちをすることと、もう1つは、果物をたくさん食べることです。
塩断ちは、最初の1週間だけ我慢すれば、塩分に対する味覚が発達して、食品の素材の良さが味覚でわかるようになります。

果物は、それ自体で味が完結していて、調味料を加える必要がありません。

DASHダイエットを2週間続ければ、本当に血圧が下がってしまいます。


健康な人が塩分をとりすぎても、すぐには高血圧になりません。それは人体の調節機能が働くので当然のことです。
だからといって、塩分摂取量と高血圧に関連がないとはいえないのです。
健康な人でも塩分過多の食生活を10年続ければ、多くの場合、高血圧になると思います。
塩分の多量摂取と高血圧症とはぜったいに関連があるのです。


DASHダイエットの詳細な説明はこちらを参照してください。
http://www6.plala.or.jp/yamaski/basic/dash.htm


下図は私の最近の血圧グラフです。
血圧を1~2時間おきに、一日に10回ほど測定したものです。
起床直後は室内が寒いので血圧がやや高くなりますが、部屋が暖まると血圧が正常値を越えることはありません。
生活習慣病の大部分は生活習慣を改めると治ります。
高血圧は塩分摂取を抑えると、90%の人が治ります。




点滴液
基本的な栄養補給のための点滴液には、ブドウ糖とナトリウムが入っています。
ある人が高血圧患者の点滴にナトリウムが入っていることに疑問をもちました。
点滴液には、
脳のエネルギーとしてブドウ糖が一日に94g、ナトリウムが一日に2g入っています。

塩分が高血圧患者に悪いのなら、点滴液にナトリウムを入っているのは矛盾しているのではないかというのがその疑問です。

そこで彼は、高血圧学会と薬剤師の会に直接電話したそうです。


高血圧学会の回答は、
・点滴は非常事態の治療だからしょうがない
・塩は天然も人口も毒
・かかりつけの医師に聞いて下さい。


薬剤師の回答は、
・医者ではないのでわかりません。
・矛盾している事については認める
・かかりつけの医師に聞いて下さいとのことだったそうです。


正解は、
人体に必要な塩分摂取量は一日2g程度です。だから、点滴液にナトリウムが入っているのです。
ブドウ糖は脳が1日に使うエネルギーとして94g入っています。

人体の細胞は、常に分解と再生を繰り返していて、そのためにナトリウムが必要です。その必要量が食塩に換算して2gのナトリウムです。

この最低限度の栄養を補うのが点滴液です。

だから、点滴液にはブドウ糖とナトリウムが入っているのです。


人体に必要なナトリウムの量は2gです。

だから、一日の塩分摂取量が2g程度なら高血圧は絶対に起こりません。

たとえば、食塩の入手が困難なアフリカのある地域では塩分摂取量が2g以下なので、高血圧症患者は一人もいません。

昔の東北地方で一日に塩分を27gも摂っていたのは、冷蔵庫が普及していなかった頃の話です。
日本では食塩が安く入手できるので食品の保存に多量に使われました。

その結果、高血圧患者が多かったのです。

一日に10g以上の塩分を摂るのは過剰です。

過剰摂取を長期に続けると、多くの場合、高血圧症になります。
しかし、高血圧患者でも1日に2gのナトリウムは最低限必要ですから、点滴にナトリウムが入っているのです。


なお、塩分を過剰に摂取すると、体液の塩分濃度を調節するために、人体は身体に水分を蓄えて濃度を薄めます。そのために、体重が増加します。
多くの血圧降下剤には利尿作用を持つものがあります。血管内の水分がクスリの利尿作用で排出されると、血管内圧が下がって血圧がさがります。
だから、降圧剤を飲むと体重が1~2Kg下がります。
降圧剤を飲まなくても、塩分の少ない食事を心がけると、同じように体重が下がります。