EPOC

運動をすると、全身の筋肉に酸素を送るために酸素の摂取量が増加します。
運動の前後で酸素の摂取量を測定すると、運動後2時間くらいは酸素摂取量がやや高くなって状態が続きます。この状態を運動後過剰酸素消費量(EPOC)といいます。


筋トレがもっとも効果的
どのような運動がもっともEPOCが高くなるを調べた実験データがあります。平均年齢26歳の男性10人で、実験の前日から決められた食事を取り、実験まえの2日間は全く運動をしていません。


実験内容は、筋トレだけ、筋トレ後有酸素運動、有酸素運動後筋トレ、有酸素運動のみの4つの運動を行い、運動後10分間の酸素摂取量を計測しました。

その結果が下図で、筋トレのみのグループが最も酸素摂取量が多く、有酸素運動グループが最も酸素摂取量が少なかったことわかりました。

運動後の酸素摂取量が多いということは、運動後も消費カロりーがやや高い状態を続くことを意味します。

しかし、勘違いしてはいけないのは、この酸素消費量は脂肪を燃やしているわけではないことです。
この酸素は筋トレで生じた酸素の負債を返したり、筋肉で生じた乳酸を肝臓に送ってグルコースに変換するエネルギーなどに疲れるものです。

有酸素運動でEPOCが少ないのは、酸素の負債が生じないこと、乳酸のグルコース変換が有酸素運動中に同時進行でおこなわれるので、運動終了後には残された負債が少ないからです。
筋トレをすると、筋トレ後にEPOCで脂肪が燃焼されると解釈する人がいますが、それは間違いです。



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運動で代謝が亢進するか?
私たちは運動をすると代謝が亢進し、運動後もしばらくは体温と血行が促進されて消費カロリーが増大すると教えられています。本当にそうでしょうか?


ダグラスバッグは高価なので、私たちには買えません。

もしも、私たちでも入手できる体温計や血圧計、心拍計などをつかって、運動時の代謝亢進の様子がわかれば、効果的な運動を探す方法が見つかるかもしれません。

そこで、運動中は10分ごとに体温、血圧、心拍数を測定し、その他の時間帯では20分ごとに測定してグラフにしてみました。


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血圧
左図で、05:15にウォーキングを1時間、10:00に40分間のジョギング、15:00に40分間のジョギングを実施しました。

運動中は血圧が上がりますが、運動が終了すると、血圧が急激にすとんと下がり、一時的に安静時血圧よりも下がります。

血圧と脈拍の積を血流量とすると、運動中は血液流が増大し、運動が終了すると元に戻ります。

深央部体温
デジタル体温計で脇下の体温と、耳温計を用いて耳内の温度を測定しました。
運動中は体温が上昇するはずですが、耳内部の体温、つまり、深央部の体温はほとんど変化しません。


脇下の体温

脇下の体温が大きく変動します。

この傾向は早朝のウォーキング時によく表れていて、ウォーキングで汗ばんでくると脇下の体温が低下し、そのまま2時間は低下したままでした。

朝食を摂ると、脇下の体温が上昇しました。


ヒトの熱生産の主な器官は肝臓でおこなわれます。

褐色脂肪細胞が心臓のまわり、首のうしろ、肩甲骨、両脇の下の5箇所に存在しています。

この実験で、運動中と運動後しばらくは脇下の脂肪細胞の発熱が止まりました。

また、血圧も運動後に下がりました。

この2つのことから、運動後しばらくは、身体が基礎的なエネルギー消費を抑えてエネルギーの回復をはかろうととしていることが見受けられます。


上のグラフからは、運動時には、なるほど血流量も体温も上がり代謝が亢進していますが、身体自信は産熱を中止し、消費カロりーを極力落としているのではないかと思われます。


私たちは、運動をすると代謝が亢進すると教えられてきましたが、運動の消費カロりーが代謝の亢進率で表されるだけで、退社が亢進するわけではありません。むしろ、運動中は、身体はできるかぎり余分な消費カロりーを抑えているかのようです。


体温や血圧圧、心拍数で見るかぎり、運動を終了すると、直ちに休息状態にはいります。

心拍数だけは運動後も、しばらく亢進状態がつづきますが、消費エネルギー全体としては亢進していないように見えます。
運動をすれば、もちろん筋肉の消費カロリーは増大しますが、そこで発生する熱量の分だけは基礎滴消費カロリーが低下しているというのが本当のようです。

このようですから、体温計や血圧計で代謝亢進の証拠を見つけることはできませんでした。

EPOC(運動後過剰酸素消費量)は、運動後の後処理のために酸素が消費されているのであって、脂肪燃焼のために酸素が使われているのではないのです。


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