運動すると糖分をエネルギー源にし、次に筋肉を分解すると聞きました。では、脂肪がエネルギーなるのは筋肉がほとんど無くなってからですか?


エネルギーの貯蔵庫は3つ
そんなことはありません。

人体のエネルギーは、肝臓、筋肉、体脂肪の3ヶ所に貯蔵されています。


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筋肉は、人体に貯蔵しているエネルギーだけを使います。
筋肉は、通常は脂肪を燃やしていて、パワーが必要なときにだけ筋肉内に貯蔵しているグリコーゲンを使います。


たとえば、椅子に座っているときは、人体は多くの筋肉を調整しながら姿勢を保っていますが、このときに筋肉が使っているエネルギーは脂肪だけです。

歩きはじめると、少しパワーが必要になるので、筋肉は脂肪のほかに筋グリコーゲンを燃やしてパワーを出します。
ゆっくり歩くと、脂肪を60%、筋グリコーゲンを40%くらいの割合で筋肉はエネルギーを使います。


> 運動すると糖分をエネルギー源にし、次に筋肉を分解すると聞きました。では、脂肪がエネルギーなるのは筋肉がほとんど無くなってからですか?


それは違います。
人体は肝臓、筋肉、体脂肪の3ヶ所にエネルギーを貯蔵していますが、肝臓のグリコーゲンは脳に供給するためのエネルギーです。
肝臓のグリコーゲンと筋肉のグリコーゲンは全く独立しているので、筋肉は肝臓のグリコーゲンを使うことはできません。


ジョギングは消耗性の運動なので、ジョギングをすると体重も減るが筋肉も落ちると主張する有酸素運動無用論者もいますが、その人の考え方は間違いです。


身体が筋肉を分解して、糖を作り脳に供給することを糖新生といいますが、糖新生が起こるのは有酸素運動のせいではありません。


糖新生が起こるのは肝臓のグリコーゲンが少なくなり、脳に供給する糖がなくなったときだけです。

運動によって起こるのではありません。
脳は人体で最も重要な臓器なので、脳自身のエネルギーが不足したときにだけ糖新生が起こるのです。

肝グリコーゲンと筋グリコーゲンはまったく独立しているので、筋肉が肝臓のグリコーゲンを使うことはできません。

ですから、有酸素運動と糖新生は関連がありません。

運動をしているときに、筋肉が自分が使うエネルギーを作るために自分自身を分解するなどということは起こるはずがありません。


下図は持久走をしているときの血液中のブドウ糖と脂肪、乳酸の濃度の変化を示したものです。
マラソンでは胃を空っぽにして走るのですが、血液中のブドウ糖濃度は4時間が経過しても一定の濃度が保たれています。

血液中の糖分が枯渇してから → 筋肉の分解が始まり → 次に脂肪の順番で燃えるなどということはありません。


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> 脂肪と一緒に筋肉も道連れになるとも聞いたのですが、それは本当ですか?


そんなことはありません。
一部のウェブサイトで、血中の糖が枯渇したら脂肪が燃え始める。筋グリコーゲンが枯渇したら、エネルギーが脂肪に変わるなどの記述が見られますが、間違っています。

もしも、血中の糖が枯渇すると、脳にブドウ糖が供給されないので低血糖になります。

そんな状態でランニングしたら、ぶっ倒れてしまいます。

低血糖状態のまま、脂肪をエネルギーにして走ることなどできません。

マラソンで30Km付近で失速する人がいますが、脂肪だけで走る状態であれば、同じように失速してしまいます。


筋肉のグリコーゲンはフルマラソンを走っても、枯渇しないように充分な量が貯蔵されています。

ですから、筋グリコーゲンが枯渇したら、エネルギーが脂肪に変わるなどということは、起こりえません。


グリコーゲン分解酵素は肝臓内にだけ存在し、筋肉にはグリコーゲン分解酵素が存在しません。肝臓と筋肉は独立しているので、筋肉が肝臓のグリコーゲンを使うことはできません。


肝臓にはグリコーゲン分解酵素が存在していて、食後時間が経過して血糖値が低下してくると、グリコーゲンをブドウ糖に変えて血中に放出します。

このグリコーゲン分解酵素のはたらきによって、血液中のブドウ糖濃度が一定になるように調整されています。


一方、筋肉にはグリコーゲン分解酵素がないので、血糖値によって変化することがありません。

筋肉のグリコーゲンと脂肪のエネルギー比率は、ランナーの意志によって決定されます。
たとえば、フルマラソンを走ってへとへとの状態でも、意志によってグリコーゲンの使用比率を高めてラストスパートをかけられます。

マラソンの最初は元気でも、ゆっくり走ってなるべく脂肪の燃焼比率を高めにし、ペースを落として走ります。

パワーの大きいグリコーゲンを使うか、パワーは少ないが豊富に貯蔵されている脂肪を使うかは、ランナーに意志しだいです。


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脂肪とグリコーゲンをどのくらいの比率で使うかは、人の意志によって決まります。
糖新生は、運動とは関係がなく、脳の消費時間によって決まります。


人体で糖新生は次のような順序で起こります。


糖新生は、肝臓のグリコーゲンが枯渇に近づく前に起こり始めます。

肝臓はまず、血中のアミノ酸から糖新生して、血糖値を維持します。

次に、もしも、血中アミノ酸が不足してくると、今度はしかたがないので筋肉の分解します。


ただし、糖新生とは、脳のエネルギーを確保するためのシステムであり、筋肉のエネルギーとはまったく独立したものです。

ですから、脂肪と一緒に筋肉が道連れになるなということは起こりません。