脂肪の分解
脂肪細胞は、細胞膜と細胞質からできています。
細胞質は液体で、核、ミトコンドリア、小胞体、油滴などが含まれていて、外へ漏れないように細胞膜が取り囲んでいます。
脂肪細胞が他の細胞と最も異なっていることは、細胞質の大部分が油滴によって占められていることです。脂肪は、油滴の中に蓄えられてします。



ダイエット7


小胞体の膜には、リパーゼという脂肪分解酵素がはめ込まれています。

油滴にはリパーゼと接触しないように扉がついています。
脂肪を分解するためには、油滴表面にある扉の鍵を開けなければなりません。
この鍵として働くのが、運動時に分泌されるノルアドレナリン、アドレナリン、副腎皮質刺激ホルモンなどのホルモンです。

運動時にホルモンが分泌し、油滴表面のタンパク質に働いて扉を開けると、リパーゼが油滴と接触できるようになります。
このように、脂肪分解には、ノルアドレナリン、グルカゴンのようなホルモンの分泌が不可欠です。


グルカゴン
人は血中のブトウ糖濃度が低下して空腹になると、すい臓からグルカゴンが分泌します。
体脂肪は空腹に備えて蓄えられたエネルギーなので、空腹になるとグルカゴンによって溶け出す仕組みになっています。
ダイエッターにとって困るのは、空腹にするか、運動しないと体脂肪が溶け出してこないことです。
ところが、私たち現代人は空腹を嫌がって、空腹になる前に何かを食べます。このため、体脂肪が増えるばかりです。
燃やして貯めないようにするには、空腹にすることと、運動で脂肪を溶かし出すことが必要です。


インスリン
私たちが食事をすると、すい臓からインスリンが分泌します。
インスリンが血中に流れ出ると、脂肪組織はインスリンの作用を受けて、血中のブトウ糖を取り込みます。取り込んだブトウ糖は、脂肪に変換されて蓄えられます。

インスリンには、ブトウ糖の取り込みを促進作用と、脂肪の溶け出しを抑制する2つの作用があります。

脂肪分解の抑制作用を持つホルモンはインスリンだけです。もしも、インスリンに抑制作用がなければ、どうなるでしょうか?
もしも、この抑制作用がなければ、食後に運動した場合に、脂肪組織で脂肪の分解とブトウ糖の取り込みが同時に起こり混乱が生じます。血液が脂肪だらけになるかもしれません。
脂肪分解の抑制作用をもつホルモンはインスリンだけです。インスリンの抑制作用はたいへん強いので、脂肪組織はブトウ糖の取り込みを続けることができます。つまり、食後に運動しても、脂肪分解が抑制されて、溶け出してこないのです。


空腹時の運動
川崎医療福祉大学で、女子大生5人に、朝食前、朝食2時間後、昼食2時間後の3回、自転車を漕いでもらって、どの時間帯の脂肪がよく燃えるかを調べました。下図は、その実験結果です。

点線のグラフは、朝食前に運動をしたグループの血中の脂肪酸濃度です。
運動開始20分後から濃度が次第に高くなっています。これは、朝食前の運動では、体脂肪が20分頃から溶け出してくることを意味します。

これに対して、朝食2時間後に運動をしたグループでは、運動中の脂肪酸濃度が低下しています。これは、食後のインスリン分泌によって、脂肪分解の抑制作用で脂肪が溶け出してこないことが考えられます。
昼食2時間後の運動グループでは運動し20分後から脂肪酸濃度が上昇していますが、スタート時の濃度が低いので、朝食前と比べると、トータルの脂肪濃度は高くありません。


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実験の詳細
被験者は,、健康な一般成人女性5名とした。運動は自転車エルゴメータを用い、 60%VO_2maxの運動強度で30分間行った。
運動は、空腹時運動群は09:00、朝食2時間後運動群、および昼食摂取2時間後運動群の3回とした。

運動中の酸素摂取量(V0_2)、呼吸商(RQ)、遊離脂肪酸を測定した。
採血は安静時、運動開始20分後、25分後,、30分後の計4回行い、血糖値, 乳酸値, 血中FFA濃度を測定した。

空腹時運動群のRQは3詳聞で最も低値を示した。しかし, 運動開始30分後では昼食後運動群が空腹時運動群と同じ値となった。
空腹時運動群の血中FFA濃度は運動中に増加傾向を示した。


まとめ
以上の結果から、 空腹時、朝食摂取2時間後、昼食摂取2時間後の3条件において30分間運動を実施する場合、空腹時の運動がもっとも脂肪燃焼が亢進することが明らかとなった。


脂肪分解の詳細
脂肪細胞が他の細胞と異なっていることは、細胞質の中に油滴がたっぷりと貯蔵されていることです。
小胞体には、リパーゼという脂肪分解酵素がはめ込まれていて、脂肪を分解させるには、リパーゼと油滴とが接触することが必要ですが、リパーゼが接触しないように扉がついています。
リパーゼの働かせて脂肪を分解するためには、まず、油滴表面にある扉の鍵を開けなければなりません。
この鍵として働くのが、空腹時に分泌されるグルカゴンと運動時に分泌されるノルアドレナリン、アドレナリン、副腎皮質刺激ホルモンなどです。
これらのホルモンは油滴表面のタンパク質に働いて扉を開け、リパーゼが油滴と接触できるようにします。
運動で脂肪を分解するには、ノルアドレナリンなどのホルモンが出されることが不可欠です。
中等度の全身運動の刺激が体に加わると、ノルアドレナリン、アドレナリン、副腎皮質刺激ホルモンなどが分泌されて、脂肪分解を促進します。
ただし、食後インスリン濃度が高いときは、インスリンの抑制作用によって、脂肪の分解が抑制されます。


分解された脂肪は?
脂肪細胞にある脂肪は、リパーゼの働きによって分解されると、脂肪酸を放出します。
この脂肪酸は、血液を通して筋肉へ運ばれて、筋肉のエネルギー源として利用されます。
筋肉には速筋と遅筋の二つの筋線維がありますが、脂肪酸は遅筋に取り込まれます。

筋線維は、赤味が濃い線維と、赤味が薄い筋線維とからできています。
赤味の濃い線維を「赤筋線維」、そして薄い線維を「白筋線維」と呼んでいます。
赤筋線維は大きな力を出すことはできませんが持久力の高い繊維です。これはマラソン型の性質を備えた筋線維で「遅筋線維」とも呼ばれています。
白筋線維は短い時間しか力を出せませんが大きな力を出すことができます。これはスプリント型の性質を持った筋線維で「速筋線維」とも言われています。
誰もがこの二種類の筋線維を持っており、2つの筋繊維を状況に応じてつかいわけています。

遅筋に取り込まれた脂肪酸は、二酸化炭素と水にまで分解されます。この過程で発生するエネルギーは赤筋のエネルギー源として利用されます。このような脂肪酸の分解は、主にミトコンドリアの中で行われます。
速筋は、ミトコンドリアが少なく、代わりにグリコーゲンをたくさん持っています。このために、速筋では脂肪酸の代わりにグリコーゲンをエネルギー源として利用します。
遅筋に取り込まれなかった脂肪酸は、肝臓に運ばれて再び中性脂肪に合成されます。再合成された脂肪は、血液によって脂肪組織へ運ばれます。