運動は食前と食後、どっちが痩せるの?


エネルギー収支がマイナスだったら痩せるのは同じだから、食前でも食後でも、摂取カロリーと消費カロリーが同じなら、結果は同じだという報告があります。しかし、私たちが知りたいのは、そのことではありません。


食前でも食後でも運動量が同じなら、消費カロリーが同じになるのは当然です。

それでは、どちらの運動が摂取カロリーをより減らせるでしょうか?

栄養管理をしている人であれば、すぐに気づくのですが、食前に運動する方が摂取カロリーを減らせるのです。



Wikipediaに、インスリンには次の作用があると書かれています。
・筋肉におけるブトウ糖の取り込みとタンパク質合成の促進。

・脂肪組織の糖の取り込み促進と脂肪の分解抑制。
・全体として異化を抑制し、貯蔵を促進する傾向になる。

Wikipediaに、グルカゴンには次の作用があると書かれています。

・貯蔵燃料を動員する異化ホルモンである。

・脂肪細胞のリパーゼを活性化して、遊離脂肪酸の放出を増加させる。

・なお筋肉ではグリコーゲン分解を促進しない。

要約すると、
インスリンは筋肉、肝臓、脂肪組織がブトウ糖を取り込むのを促進するのと同時に、脂肪の分解を抑制する2つの作用を合わせ持っています。
そして、グルカゴンは脂肪分解を促進して、遊離脂肪酸を放出させます。


インスリンとグルカゴンが血糖コントロールの一義的なホルモンです。
食後、血糖値が上がるとインスリンが分泌されて、インスリン濃度が上がります。
インスリンはエネルギーを蓄えるのと同時に、脂肪の分解を抑制します。

数時間が経過して、血糖値が下がると、グルカゴンが分泌されます。

グルカゴンはネルギーを取り出します。

インスリンとグルカゴンはプッシュプルの関係にあります。車を前から引っ張り、後ろから押して、協力して働く関係にあります。
血糖が高くなると、インスリン濃度が高くなり、エネルギーの貯蔵を促進し、脂肪の分解を抑制します。
血糖が低下すると、インスリン濃度が低下するので脂肪分解の抑制が弱くなり、グルカゴン濃度が上がるので、脂肪分解が促進されます。
インスリンとグルカゴンは、このように協力してはたらくので、他のホルモンの作用よりも協力です。
インスリンとグルカゴンは、この混合比によって、強力に、リアルタイムに血糖値を制御します。

それでは、食後、インスリン濃度が高く、脂肪組織がブトウ糖を取り込んでいるときに、運動を始めたらどうなるでしょうか?

運動20分後に、ノルアドレナリン、アドレナリンなどの濃度が高くなり、脂肪組織のリパーゼを活性化しても、インスリンの脂肪分解の抑制作用が効いているので、脂肪は溶け出してきません。

もしも、このインスリンの抑制作用がなければ、食後に運動すると、血中に脂肪が溢れて高脂血症状態になるだろうと思います。


インスリンとグルカゴンのペアの働きを無視したダイエットは、ベストの方法ではないと思います。
たとえて言えば、食べ過ぎたって、それ以上に運動すれば痩せますが、それよりも、食べ過ぎないようにして、運動する方が、効果的なダイエットができるのではないでしょうか?


運動中の脂肪の濃度
ダイエット7のブログ-遊離脂肪酸

上図は、川崎医療福祉大学で、女子大生20人に、朝食前、朝食2時間後、昼食2時間後の3回、自転車を漕いでもらって、どの時間帯が脂肪がよく燃えるかを調べた結果です。

朝食前に運動したグループの脂肪酸濃度(点線のグラフ)は、運動を続けるにつれて、血中の脂肪酸が増加しています。

これは空腹時はインスリン濃度が低いので、運動を続けると、体脂肪が溶け出してくることを意味します。

ほかの運動グループの脂肪濃度は低いままです。

食後の運動では、インスリン濃度が高いので、アドレナリン、ノルアドレナリン、コルチゾルなどのホルモンが出ても、インスリンが中性脂肪の分解を抑制するので、なかなか溶け出してこないのです。


上図で、昼食2時間後に運動を始めたグループは、20分後から脂肪酸が増加しています。

これが、有酸素運動は20分以上といわれる所以ですが、それよりも、空腹時に運動すれば、運動の最初からもっと脂肪の燃焼量が大きくなります。


ためしてがってん!運動するなら食前?食後?
http://www9.nhk.or.jp/gatten/archives/P20110105.html


4人の被験者に、同じエクササイズを食前、食後で分かれてやってもらったところ、食前に運動する方がダイエット効果が高いことが分かりました。そのカギは血糖値。


食前運動の人の血糖値の変化をはかってみたところ、運動後に血糖値が上昇していたのです。

実は空腹感を感じるポイントのひとつが血糖値。血中に糖が少なくなると空腹を感じます。


血糖値を上げるには糖分を摂取するのが手っとり早いのですが、なんと、運動することでも血糖値を上げることができます。
運動により糖や脂肪の倉庫である肝臓や内臓脂肪からエネルギーが引き出され、血糖値が上昇、脳が空腹じゃないと感じるのです。


食前運動のメリットは3つです。

(1)たまっていたエネルギーから消費する。
(2)血糖値が上がって食事の量が減る。
(3)どうせなら食事を減らそう!という気持ちになる


この3つの効果がダイエット成功の秘密です。