もう10年以上前の話になりますが、今の保健師の仕事に就く前は、ケアマネージャーとして居宅介護支援事業所で働いていました。
主な仕事は、介護サービスを利用される地域の高齢の方のケアプラン作成を担当することでした。
最近、ふと、思い出した方がいます。
80前後のMさんという女性。
農家の嫁として長年働いていらして、ご主人を亡くされて一人暮らし。
とてもお話し好きで、いつも穏やかな方でした。
身の回りのことは、ほぼ自立していましたが、耳が遠く補聴器を使っていらっしゃいました。
補聴器をつけても聞こえにくそうでした。
ある時、Mさんがおっしゃいました。
「言霊ってありますよね。言葉って、人を生かすことも殺すこともできますよね。」
相手の言葉が聞き取りにくいMさんは、一旦話し出すと止まらないことがあります。
病院の診察室で、医師に聞きたいことがあったようですが、医師の答えが聞き取れず訴えが長くなってしまったようです。
医師は大きな声でMさんの話を遮り、「だからね!それは年だから仕方ないの!」となったようでした。
その次は別な医師にあたったのですが、Mさんの顔を見て話を聴き、なかなか良くならないことに共感してくれたそうです。
そうすると、Mさんの体の不調も軽くなったとのことでした。
診察を待っているたくさんの患者さんの事を考えると、1人に長く時間をかけられないのは当然で
最初の医師も様々な事情があったかもしれません。
Mさんも普段から耳が遠いことで人との行き違いが多かったので、傷つきやすい状況にあったかもしれません。
どんな言葉か、だけじゃなくで、どんな場面か、その時のお互いの心の状況で変わってくるとは思います。
私も機嫌が悪い時もあるし、いつも完璧ではないけれど。
特に、文字だけのやり取りでは、上手く伝わらなくて失敗したこともあります。
リアルに会って誤解を解くチャンスがあった時は、お互いの思いが伝わっていなかったことがわかりました。
そうじゃない時はもやもやが残ったまま、という事もありました。
これからも失敗すると思うけれど
言葉が持つ力の大きさは、忘れないようにしたいと思います。