スシロー、くら寿司の回転ずし大手2社が、そろって魚の養殖や品種改良などの水産事業に乗り出すことになった。
くら寿司<2695>は、2021年11月1日に水産の新会社KURAおさかなファーム(大阪府貝塚市)を設立しハマチなどの養殖事業を立ち上げた。これに続きスシローを展開するFOOD & LIFE COMPANIES<3563>も11月12日に、先端技術を活用した魚の品種改良に着手することを公表した。
環境変化による漁業資源の減少や、水産業界の人手不足などの現状に対応し、魚の安定的で、持続的な確保を目的としたもので、いずれもAI(人工知能)やゲノム編集(遺伝子を切断し、もともと備わっている性質を変える技術)などの先端技術を持つ企業と連携して実現を目指す。
事業が軌道に乗れば、すしネタの安定調達はもちろん、仕入れコストの低下などの効果も期待できるだけに、本業の回転ずし事業の競争力強化につながりそうだ。
資本提携や合弁会社設立へ
FOOD & LIFE COMPANIESは、ゲノム編集技術を持つプラチナバイオ(広島県東広島市)と、ゲノム編集技術を活用した水産物の品種改良を進めるリージョナルフィッシュ(京都市)の3社で魚の品種改良の共同研究を始める。
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ゲノム編集は、新しい性質を付け加える遺伝子組換え技術とは異なるもので、品種改良に用いると、交配による品種改良よりも大幅に時間を短縮することができる。
同社によると従来のゲノム(染色体に含まれる全遺伝情報)を編集する技術はRNA(リボ核酸=たんぱく質の合成に必要な遺伝子)が含まれるため、遺伝子組換え生物を使用する際の規制措置を定めたカルタヘナ法に沿って、遺伝子組換え生物でないことを確認する必要があった。
ところが今回活用する技術は、RNAを含まないため、従来の優れた品種を選ぶ方法や、放射線や薬剤を与えて突然変異を起こさせる方法などと、同じような扱いになるという。
今後FOOD & LIFE COMPANIESが、魚に対する社会のニーズを助言し、他の2社が品種改良のターゲットとなる遺伝子を探し出したうえで、ゲノム編集処理を実施する。さらにFOOD & LIFE COMPANIESは両社との資本提携を含めて関係を深めていくとともに、養殖事業者との合弁会社設立なども検討していく。